くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「めし」

めし
『めし』
1951/東宝/白黒/97分〈ニュープリント〉
原作:林芙美子 脚色:井出俊郎、田中澄江 撮影:玉井正夫 美術:中古智 音楽:早坂文雄 出演:原節子上原謙島崎雪子小林桂樹杉葉子、風見章子、杉村春子山村聡中北千枝子  

倦怠期の夫婦の心理の綾を巧みに掬い取り、成瀬の成熟した日常的リアリズムを確立した作品となった。この年急逝した林芙美子の未完小説の映画化。以後、林原作を次々と映画化することとなる。◆キネマ旬報ベストテン2位、毎日映画コンクール日本映画賞・監督賞


成瀬巳喜男監督特集、本日は「めし」
戦後作品の中で「浮雲」の絶頂期に至る前の傑作として名高い作品。
物語は前日の夫婦作品同様に倦怠期の夫婦の物語である。

成瀬巳喜男作品を見るに、ほとんどが男と女の物語に終始しているところはある意味小津安二郎が平凡な課程の中のドラマを淡々と描いていった徹底さ戸似ているのかもしれません。

もちろん、本日見た「めし」も成瀬監督の計算された構図とシーンの連続により無駄のない設計図の中で動くように物語が進行していきます。
一つ一つのシーンや場面がそれぞれに意味を持っていて、作品の中にリズムを形作っているのは昨日の作品同様に見事なものです。

「めし」には猫が登場しますが、この辺は少し様相が違うといえば違います。とはいえ、この猫の存在も特に重要ではないものの、作品のテンポに小気味良くスパイスとなって生きており、その意味でも無駄な存在ではないところは見事です。

物語は大阪が舞台になりますが、どうも大阪は原節子には合わないようで、どうもしっくりこない。
やはり彼女は東京の女性だなぁとつくづく思いました。

この作品も評価が高いだけあって、作品の充実度は群を抜いています
現実に生涯に84本の作品を残している成瀬巳喜男監督ですから、当然傑作もあれば凡策も、実験的な作品もあります。こうして集中的に見るとその区別がくっきりと見えてきて非常に勉強になります。

しかし、作品の背景に映る景色はさすがに時代を感じますが、物語のテーマに古さを感じないし、登場人物の描写にも全然違和感がないのはさすがといわざるを得ませんね

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上原謙 林芙美子 成瀬巳喜男

浮雲 流れる 晩春 稲妻 夫婦善哉