堤幸彦監督ということで、本来ジャパニーズホラーは劇場へ行くことが滅多に無いのですが、ちょっと期待して見に行きました。
堤幸彦といえばTVドラマ「世界の中心で愛をさけぶ」、「トリック」そして名作「ケイゾク」の独特のサイケデリックな映像が売り物の奇才である。もちろん、「サイレン」の物語設定や、ゲーム版の「サイレン」の第一作のテレビコマーシャルがあまりにもショッキングすぎて苦情が相次ぎ、途中で放映中止になったなどの話題もあって、凝った映像やトリックを期待していったのです。
が・・映画初主演の市川由衣が良くない。TV「H2」で、ちょっと見込みのありそうな女優さんかななんて思っていたのですが、さすがにスクリーンとなるとあの大画面で通用するためにはかなりの演技力が必要であることがわかりました。彼女がなってないのです。下手!というべきか、演出が悪いのか、周りを囲む森本レオや西田尚美のベテラン俳優さえもリズムをこわしたかのように演技が乱れている。
ということで、採点は低い。
物語はといえば、夜美島へ弟の病気療養にやってくる森本レオら三人の家族がその島で体験する恐怖の世界を描いている。
夜見島(やみじま)という名前、なんか横溝正史のミステリーを思わせますよね。でもこの作品はホラーなので「その島でサイレンが鳴ると外にでてはいけない」という伝説から恐怖が市川由衣らの家族を襲いはじめます。
でも、サイレンの真相?なぜ島民が誰もいないのか?なぜ!なぜ!という伏線と解明が全くちぐはぐなのです。これが伏線かと思えばその伏線を無視したようなシーンが続いたり、物語の冒頭で登場する謎の男(阿部寛)が結局謎のままであったり、あばら屋で見つけたノートの切れ端が謎解きのキーになるのかと思えば、結局、クライマックスで・・・
という具合に、脚本がなっていない。堤幸彦の映像に頼ろうとしたのか、売り物のサイレンによる音の恐怖に話題性を求めたのか、「H2」で人気がでた市川由衣の人気にあやかろうとしたのか(ちょっと時季遅れ)、どうもポイントが定まらない。
正直、残念でならない作品ですが、森本レオらの家族が住む家がやたら長い廊下があって、「シャイニング」を思わせるシーンや異常な恐怖感をあおるような鉄塔のシーンなど、凡人監督の演出では見られない奇抜さはあることは確か。しかし、もっと名作ホラーやサスペンス、とりわけヒッチコック映画などの技法をもっと勉強して欲しいものである。真似をするのではなく学んで欲しい。