くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ナルニア国物語/第一章:ライオンと魔女」

ナルニア国物語

この春最大の期待作品こそこの「ナルニア国物語/第一章:ライオンと魔女」である。
そして、今日その期待作品を見てきたのです。
そもそも、ファンタジー系は大好きな私にとっては、冒頭部分からあっと驚く導入部分でした。
なんせ、いきなりドイツの爆撃機コクピットが映し出され、イギリス上空に空襲を始めるシーンが現れます。最初は何か映画の予告編かと勘違いしましたが、場面がベベンシー家の子供たちが逃げるシーンになって納得。

そうです、「ナルニア国物語」はイギリスを舞台にしており、しかも主人公たちが疎開して片田舎の古い教授の家に行くところから物語が始まるのですから。そしてその家にはあの衣装ダンス、そうですナルニア国にはいるための入り口である不思議の扉のある衣装ダンスがあるのですから。

そして物語は少しずつ本編に入っていきます。疎開した家がやたらでかくてまるで迷路のような作りになっています。まるで「ハリーポッター」シリーズのホグワーツ魔法学校の迷路のような怪談のある建物の小型版のように。

さて、ここで暮らしはじめる四人の兄弟。仲が良くもあり、仲が悪くもあるというありきたりの四人ですが、末っ子のルーシーが衣装ダンスからナルニア国に迷い込んでからこの兄弟たちは不思議な世界へと足を踏み入れることになります。このあたりもそうですが、全体に音楽の使い方が非常に斬新です。やたら壮大な曲が流れるのではなく、テンポの良い歌が流れてみたり、軽やかな曲がカバーしてみたりと多才そのもの。しかもクライマックスには壮大な曲が覆い始めるのですから。

原作はC・S・ルイスというイギリスの作家。ちょうど「指輪物語」のJ・R・R・トールキンと親しかったために「ナルニア国物語」と「指輪物語」は比較されるそうです。私はどちらも原作を読んで映画も見てことになりますが、それぞれは待ってく別の世界であり、それぞれが本当に個性的なファンタジーになっていると思います。

さて、ナルニア国に入った四人の兄弟はそこで百年の冬にふるえるナルニア国の現状と「二人のアダムの息子と二人のイブの娘が現れるときアスランの再来と共にナルニアの百年の冬は終わりを告げる」という予言を知り、そしてその予言の四人こそが自分たちであると教えられるのです。

ナルニア国の造形はまさにCG無くしては描ききれないほどの壮大な世界であり、「指輪物語」の世界のCGとはまた違った趣に作られています。登場するクリーチャーもおとぎ話的なイメージが強く、どこか大人びた暗さのある「指輪物語」の登場人物とは雰囲気が全く違います。
冬の世界にふるえて暮らしているとはいえまた恐怖の女王におびえているとはいえ、地獄のような暗さが見られないのは根本的に違う世界だからでしょうか。

視覚アドバイザーなどが「指輪物語」のスタッフであるがゆえか、あるいはやはり意識した部分もあるのか、クライマックスの戦闘シーンの群衆場面の映像ワークは「指輪物語」に似ているかのようにも見えるのですが、この「ナルニア国物語」の戦闘シーンにはどこか人間的なぶつかり合いや古風な感情の戦いなどが見え隠れし、ほぼ完全にCGシーンと思われた「由輪物語」に比べ感情移入してしまうのです。

ピーターが戦うのはCGクリーチャーなのになぜかリアルで、見ている私たちが思わず入り込んで応援してしまうという錯覚に陥ってしまいます。半身半馬のセントールオレイアスがやたらとかっこよくて頼もしく、その戦いシーンも日本の戦国時代の合戦を思わせるような人間くささを醸し出して、思わずわくわくしている自分に気がつくのです。

アスランの姿はほとんどがフルCGなのですが、さすがに動物を作り出すとほとんど本物のライオンと見分けられないほどにリアルにできあがるものですね。しかも風格と貫禄があって、まるで神のように見えてしまいます。

全体の印象をまとめてみても、「指輪物語」よりも人間くさく感じるし、どこかおとぎ話的でもあり、それでいて子供心に戻って感情移入してしまう。ディズニー映画の演出力のたまものか、監督アンドリュー・アダムソンの子供心を把握しきった演出の力か、それでいて、決して子供向けの物語にせずにしっかりとした場面が展開するのです。二時間半があっという間に終わってしまうのは「指輪物語」でも経験しましたが、どこか違うような気もする。

あまりにも緻密な描写が多すぎて映像化が不可能と言われていた「指輪物語」に対し、あまりにも簡略で読者の想像によって未知の世界が作り出されていくために今まで映像化が不可能とされていた「ナルニア国物語」。全く相対するファンタジーがここまで見事にスクリーンに登場したのは本当にうれしい限りです。

さて、今回が第一章。残る六章につないで欲しいものです。私としては章を重ねるごとにスケールアップする必要のない原作だと思うので、今回の第一章のように丁寧な作品づくりを期待したいですね。良い映画でした。

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