くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「Vフォア・ヴェンデッタ」

Vフォア・ヴェンデッタ

「Vfor Vendetta」と書く。Vはヴィと読む。いかにもわかりにくいし、チケットを買うときも言いにくい題名である。
マトリックス」のウォシャウスキー兄弟他スタッフが集まって新たなる映像世界というふれこみで公開されたので、見に行ったのであるが、何とも平凡な映画であった。いや、あのカリスマ性を理解できなかったのだろうか?

もともとの原作はDCコミックである。つまりマンガの実写版というもの。でも「スーパーマン」や「バットマン」と違って、ほとんど知られていない作品である。
独裁政権になって世界の覇者になったイギリスを舞台にした近未来ドラマで、政府を倒すために一人テロリズムを繰り広げる主人公V(ヴィ)の姿と、彼に恋心を抱かせる少女ナタリー・ポートマンの話をその背景に複雑な政治事情を盛り込んで描いているのであるが、何とも中途半端である。

背景にある独裁社会の矛盾や倒錯性をかつての「未来惑星ザルドス」や「未来世紀ブラジル」「ブレードランナー」などのようなカリスマSF的に描いているわけでもなく、といって、得意な過去を持つ主人公Vの心の葛藤を押し出しているわけでもない。ナタリー・ポートマンとの恋愛ドラマに悩む主人公の姿を描いているわけでも、革命を成功させるべく画策する主人公のヒーロイズムに焦点を当てているわけでもないように見える。

脚本が悪いのであろう。ウォシャウスキー兄弟が脚本を書いたのであるが「マトリックス」と雲泥の違いである。ナタリー・ポートマン扮するイヴィが捕らえられて、丸刈りにされて拷問を受ける下りまでの物語があまりにも緞帳である。わずか二時間あまりの作品なのに三時間ほどに感じられ、途中だれてしまうのだ。
新しい映像世界というふれこみのシーンなど全くなく、何の斬新な映像も見られないままに淡々と物語が進んでいく。

丸刈りになったナタリー・ポートマンとVのからみも全然いけていない。
確かに最後までVの素顔をあかさないのはそれはそれでなぞめいていいのであるが、(といって、このVを演じているのは「マトリックス」のエージェントスミス役のヒューゴ・ウィービングである)その効果も全然作品に生かされていない。Vがかっこよくないというのが最大の失敗であっただろう。