くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「カポーティ」「ストロベリーショートケイクス」

カポーティ

トルーマン・カポーティが残した文学史上の傑作とされる「冷血」の執筆経緯とこの後一作も発表しなかった経緯を描いた話題作である。
はたして、カポーティは何故、死刑囚ペリー・スミスと対話する中で何を感じたのか?

そんなキャッチフレーズが貫かれていく物語なのだが、ところで、トルーマン・カポーティとは何者か?
知る人ぞ知るあのオードリー・ヘップバーンの代表作「ティファニーで朝食を」の原作者である。

もちろん原作と映画はかなりお話がかけ離れているようで、「この映画の主演はオードリー・ヘップバーンよりマリリン・モンローのほうがよかった」などどカポーティに言わしめたといわれています。

そんなカポーティが何故、文学史上の傑作にしてノンフェクション・ノベルなるジャンルまでうち立てた「冷血」を書いたのか?
そもそも、ゲイであり、やや甲高い声でしゃべる主人公の姿をフィリップ・シーモア・ホフマンが見事に演じている。最初はあまり感じなかったが、かなり女形的な仕草とセリフ回しをしていることに気が付く。これはさすがに吹き替えでは絶対にわからない。

登場人物を的確に登場させ、ある新聞記事に目をとめて、ペリー・スミスの事件にのめり込んでいくまでは、かなり淡々と彼の弁の達者ぶりが描かれ、そして、本編にはいるといつの間にか体当たり的に取材を続けるカポーティの姿が鬼気迫る勢いで画面を覆っていく。

このあたりにはいるともう映画のリズムの中に乗ってしまう。
最初にベビーフードを持ち込んで心から接していこうとするカポーティの姿は何処か心打たれてしまいます。
そんな姿に自らの胸の内を開いていくペリー伸す型もまた何処か感動的ですね。

ある時は繊細に、ある時はふてぶてしく、そしてラストではもの悲しい犯人像を演じたクリフトン・コリンズJrもなかなかの演技を見せているが、アカデミー賞を取ったのはホフマンである。

ラストシーン、物陰でペリーの絞首刑シーンを見つめるホフマンが、ペリーの足下がはずれたとたん、思わず驚いたように体が震えるあたりは素晴らしかった。
一人の取材相手を、いや本当は友人であったのか?自らの小説のラストを描くためにペリーの死をのぞみ、一方で死を引き延ばそうとする苦悩、そして迎えるクライマックスの姿は言葉にならないほどにっせまってkるものがありました。良い映画でした。

ストロベリーショートケイクスさて、もう一本見たのは「ストロベリー・ショートケイクス」。
実は本日、上映後に池脇千鶴さんの舞台挨拶があるというので出かけたのだ。

正直、映画はもう一つリズムが感じられなかった。ベストセラーの原作本の映画化である。しかし、乗ってこない。
確かに冒頭部、池脇千鶴のアップからはいるコミカルな導入部は、これはいいかもしれないと感じさせる。このテンポがこれにつづいて描いていくべきであったのだが、何をはき違えたのか、冒頭シーンのみしか熱さを感じなかった。

残る三人の登場人物の女性の描き方が、それぞれ中途半端な上にそれぞれに個性が見られないために区別できないほどにまぜこぜになる。中村優子以下女優人が池脇千鶴をのぞいて演技力がなさ過ぎるのか演出が弱すぎるのか?
その中で時々池脇千鶴だけが目立つのは、演技力のたまものというべきだろう。

やたら見せてくるセックスシーンとセミヌード場面、しつこいほど見せる嘔吐シーン。それぞれのエピソードがきっちり描ききっていないためにやたら映画が長く感じるのである。もっと固定映画の傑作を見て勉強すべきではないでしょうか?

ちょっと期待の作品であったが、池脇千鶴のコミカルな役柄だけが目立った寂しい映画であった。
この手の作品ではやはり「きょうのできごと」などがすばらしいだけに残念でした。

上映後、池脇千鶴中村優子中越典子、そして監督の矢崎仁司監督が登場。
とにかくこちらが目当てでもあったので必死。やはり池脇千鶴はかわいらしかった。