くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「地下鉄(メトロ)に乗って」

kurawan2006-10-22

本当に純粋な映画に出会いました。「地下鉄(メトロ)の乗って」はそんな映画でした。
最初は「ALWAYS三丁目の夕日)のタイムトラベル版かと思っていたので、出だし部分は少し、見当違いで、入り込みにくかったのですが、堤真一の淡々とした演技と大沢たかおさんの鬼気迫る迫力ある演技、そして岡本綾さんはやはりかわいらしいと思うに至って、すっかり入り込んでしまいました。

物語は主人公真次(堤真一)が地下鉄の駅で一人の老人(かつての恩師)に出会うところから始まります。
真次が新中野の駅を出ると時は東京オリンピックの年。しかも兄が交通事故で死んだ日なのです。公衆電話から電話をすると現代につながるのですから混乱した時間の狭間というのでしょうか?

物語は、反発していた父と真次が様々な時代で出会う中で、父の本当の姿を目の当たりにしていくと共に現代で不倫関係を続けているみち子(岡本綾)の過去が少しずつ明らかにされていきます。

何度も現代と過去を行き来しながら、しだいに父とのわだかまりが解けていく一方でみち子のことも明らかになっていくという展開なのですが、特にカメラワークが素晴らしいとか、映像に個性があるとかではなく、きっちりと組み立てられた脚本の中で本当に丁寧に描かれて行きます。
このあたりは篠原哲雄監督の力量なのでしょうか?

原作は「鉄道員」の浅田次郎さんなので、「鉄道員」同様、何処かファンタジックなタイムトラベルワールドが展開します。そしてラストシーン、これは何とも想像し得なかった、ちょっと悲しい中にあまりにもショッキングなラストなのですが、その後の感動といったらもう、並の映画では味わえないものでした。

始まりの段階ではちょっとなぁと思っていたこの「地下鉄に乗って」ですが、いつの間にかファンタジーの中に入り込み、そして、どっと熱い感動に襲われてラストシーンを向かえるという、まさに素直に感動できる良い映画でした。