くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ルードヴィヒ神々の黄昏」(完全復元版)

ルードヴィヒ神々の黄昏

先日につづいてヴィスコンティ生誕百年上映会に出掛けた。
本日の映画は「ルードヴィヒ・神々の黄昏」完全復元版である。

さすがに、四時間をこえるとしんどかった。途中十五分休憩があるとはいえ、こたえました。思えば、はじめてこの映画を見たのは26年前です。試写会だった。
一般公開版がカットされると聞いで必死で試写会応募して当てたのだ。
でも、その試写会版も今回の完全版より10分程短かったと思います。

完全復元された部分がどのあたりかは、何せ全体に長いのでわかりませんが、そもそも物語をほとんど覚えていないのですから、比べようもないと言うものです。

でも、見ているうちに思い出したのは、鏡がやたらでてくるということ。部屋のあちこちに鏡がおいてあって、若き国王ルードヴィヒ伸す型などを映し出します。特に徐々に部屋の鏡が多くなって、クライマックスでは部屋中が鏡になっている(もちろん調度品に飾られていますが)ところをみると、おそらく、ルードヴィヒという存在を鏡に映し出された架空の姿として描こうとしたヴィスコンティの意図なのかもしれません。

横長のワイドスクリーンを燭台や花瓶などの調度品を画面の手前にどんとおいて、その無効で演技をさせるという構図を作ることで、見事な比率を生み出している様はさすがにルキノ・ヴィスコンティ。その調度品もアップに耐えられるほどの非常に趣味の良い品物ばかりなので、それだけでも風格のある画面になります。そのうえ、豪華絢爛たる部屋の作り、さりげなくかけられた絵画、ソファにそれとなくおかれた絵画など何ともヴィスコンティらしい構図が満載です。

物語は若くしてバイエルの国王になったルードヴィヒ(ヘルムート・バーガー)がオーストリア王妃のエリザベートロミー・シュナイダー)を慕いながらも、自らの王としての生活に縛られ、苦しみながらもがいていく様を描いています。ラストシーンは自殺か他殺かわからない謎の死を持って映画は終わります。

確かにしんどい映画ですが、終わってみると、もう一度見てみたくなる。何とも奥の深い映像美と忘れられない物語が心に残る、さすがに名作と呼ばれるに十分な貫禄のある映画でした。今の時代、こうした映画がないですね。寂しい限りです