くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「王の男」

王の男

韓国で四人に一人がみたという大ヒット映画にして、数々の賞に輝いた秀作とのふれこみで日本上陸。
朝鮮半島の歴史には疎いものの、かつて、朝鮮半島に君臨した実在の王ヨンサングン、その非道ぶりとその王に気に入られて宮廷に迎えられた二人の旅芸人たちとの実話とフィクションを交えた物語である。

前半三分の二が非常にテンポがよく、作品としてのリズムが見事に組み立てられている。
冒頭部分の旅芸人たちの姿と主人公の二人の性格付けと紹介、それに続く当時の朝鮮半島の政治情勢。そこから、宮廷の中の物語に入ってからの王という一人の人物の本当の人間の姿をかいま見せてくるあたり。そして、一気に腐りきった武官たちを罰するという急展開から、芸人たちが宮廷に迎えられた本当の意味が少しずつ明らかにされていく下りまでのリズム。長さといい、画面の構成といい、見事なものであった。

ところが、そこからが、ややくどい。それまで生き生きと描かれてきた王の姿が、その残忍さを全面に出した演出へと変わりはじめ、せっかく中盤で王の人間としても苦悩とその内面を丁寧に見事に見せてきたのが、テーマがずれて、どっちつかずになってしまうのです。

本来、残忍で、独りよがりの王であったという史実をどうしても表に出さなければいけなかったからでしょうか?それとも、クライマックスの老高官たちの反乱を描きたかったために無理矢理挿入していったのでしょうか?このあたりから、視点が芸人から王へ、そして、老高官たちへと中途半端に移り初めて、せっかくのすばらしい映画のテンポが崩れ始めます。

後半の三分の二はくどい上に、抑揚のない展開になってしまって、ラストシーンのストップモーションによる幕切れも何の意味もなくなってしまうのは本当に残念です。

作品としては悪くはありませんが、中盤までのすばらしさと後半部分の失速が本当に残念な作品だったと思います