くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「鉄コン筋クリート」

鉄コン筋クリート

松本大洋の傑作コミックがなんとマイケル・アリアスという外国人の手でアニメになった。
CMフィルムをみたときはその縦横無尽に飛び回る主人公たちクロとシロの姿、背景に広がるどこか魅力的な景色に思わず目を見張った。

もちろん、松本大洋のファンでもないし、どちらかというとアニメファンというわけでもないが、絵もたしなむものとしてあの色彩感覚、オリジナリティあふれる都市デザイン、キャラクターの独創性に惹かれないわけはなかったのである。

物語はあるどこかまだ古風な義理人情の世界が残っているような町を舞台にして、そこにすむクロとシロといういわば不良少年を中心に、時代の流れの中で町が変わりつつある様子をとにかくユニークに描いていく。

このクロという少年、けんかがやたら強い。というか超人的に建物を上ったり空を飛んだり、大人をぶちのめしたりとリアリティのかけらもないほどにど派手なのである。そして、このクロといつも行動をともにしているシロは兄弟なのかそうではないのか不明だが、いつもこのクロと一緒にいて、ちょっと白痴的な性格の持ち主。といってもただ純真なだけなのかもしれず、そのあたりの個性もなかなか複雑である。

そんな主人公を取り囲んで、古くさい義理人情や古き良き懐かしさをセンチメンタルに追いかけるやくざの幹部や刑事がアンバランスに登場してくる。

周りの町の不良少年からも挑戦を受けるほどの悪ガキのクロとシロ(二人をネコと呼ぶ)、彼らこそがこの町そのものであるという展開が暴騰から続くが、すでに周りの町は近代への変化を遂げて、西洋的な合理主義と冷酷な暴力の町へと変わっているのである。そして、そのクールな世界がクロとシロ野町を飲み込んでくると彼らはその変化に抵抗しながらも同化し、さらに新しい成長を遂げていこうとする。

全く、何とも表現のしようのない物語であるが、そんな物語が、ある時はレトロにあるときはサイケデリックにそしてある時は渋さを持った色彩画面が繰り広げられるので、そんな絵を見ているだけでも商いほどの映像世界なのです。

とにかく美しい。そしてシュール。でも、ワンシーンワンシーンをポスターにしたくなるような画面。そこにとけ込む登場人物たち。ストーリーを持った映画でもあるのですが、動く絵画のような美しさもあります。

日本アニメの一つのオリジナリティ。そんな形容がぴったりの「鉄コン筋クリート」という映画でした。