くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「もだえ」「危機」

もだえ

本日は予定していなかったイングマール・ベルイマン特集「もだえ」と「危機」を見に行く。

「もだえ」はイングマール・ベルイマンの監督作品ではなく脚本を書いた作品である。映画監督としてデビューする前の作品で、演出はアルフ・シューベルイという監督である。カンヌ映画祭グランプリ受賞作品であるから、映画としては一級品である。

物語はある学校を舞台に、一人のややサディスティックな教師とその愛人、そしてその女性を愛してしまった学生とのものがたりである。
演出がベルイマンではないので、画面からは独特のカメラシーンは出てこない。国柄や時代の違いもあってか、どうも物語にしっくりとはまりこめなかった。

際だつ場面は、主人公の学生が女性と会っているときに影になって手がのびて来る下りは、どこかキャロル・リード監督の「第三の男」を思わせる物があった。

一時間半ほどの作品であるが、やはり、ベルイマンを見に行っているという気持ちがあるので、ベルイマンと違う演出を見せられると、いくら名作といわれてものめり込めず、次の「危機」までの時間つなぎとしての鑑賞に終始してしまいました。

次の「危機」はイングマール・ベルイマンが監督デビューした作品です。日本未公開作品です

継母に育てられた一人の女性ネリーが、ある日本当の母から迎えに来られ、母の元へ行きます。継母はすでに不治の病で、余生を、精魂込めて育ててきたネリーとすごすつもりだっただけに、去ったあと、落胆し、さらにネリーの将来の夫にと一緒に下宿している獣医のウルフも去ってしまい、失意の生活になっていきます。

結局、実母との生活はうまくいかずいろいろな不幸も重なってネリーは帰ってくるのですが、まだまだあの毒のあるベルイマン映像は見られません。こんな作品も作っていたのだなぁと感じるばかりです。
しかしながら、前述の「もだえ」と比べると画面の構図は全然違うし、人の配置、さらに、後に頻繁に出てくる鏡のシーンなどもちらほらと見られ、「もだえ」のアルフ・シューベルイ監督と後の巨匠イングマール・ベルイマンとの差をかいま見せてくれる映画でした。

この作品でも後の作品に効果的に挿入される鳥のさえずり、激しいクラシックの音の挿入、静と動のぶつかり合いで見せる場面等が時折見られます。

ネリーが実母の店で実母の愛人ヤックと情事を交わしているときにカーテン越しに実母がのぞくシーン、それにかぶる隣の劇場の音楽、など、これがベルイマンだなぁと思わせられます。

まだまだ、デビュー作品でもあり、見るからにベルイマンだという個性は見られないけれどもそんな所々に伺えるベルイマン色は、やがてどんどんエスカレートして「処女の泉」や「叫びとささやき」「仮面ペルソナ」に結実していくのでしょう。