今や名監督の域に入ろうとしているソフィア・コッポラ監督が、歴史上もっとも有名なセレブであり、もっとも好かれ、もっとも嫌われた、女性マリー・アントワネットの半生を描いた意欲作「マリー・アントワネット」をみる。
期待半分、不安半分、宣伝フィルムをみるに、あまりにもモダンに、しかも女性の立場からのかなり偏ったイメージで作られたような感想があり、「ロストイントランスレーション」でもそれなりの印象しか持っていなかったソフィア・コッポラ監督だけに、かなり迷った末の鑑賞である。
いきなり、宣伝フィルムにも使われているポップでハイテンポな曲をバックにタイトルが始まります。「マリー・アントワネット」のタイトルのロゴも真っ赤な書き殴ったようなデザインからして、この作品の形が見えてきたように思いました。
本編にはいると、オーストリアの生地で、今まさにフランスに嫁ごうとするマリーアントワネットの清純な姿がうつります。キルスティン・ダンストは本当にキュートな女優さんですね。にこっと笑うと、えくぼが見えたりして、「スパイダーマン」の時はそれほど思いませんでしたが、この「マリー・アントワネット」は彼女の魅力を最大限に出していると思います。
嫁いだものの、なかなか子供ができずに悩む様子。背後にささやきのように聞こえる陰口の効果音が、まるで先日みたベルイマン監督の「叫びとささやき」のようです。
そんな声を視線を左右に移すことで、心の動きとして表現するキルスティン・ダンストの演技はこれまたなかなかのものです。かえって、そんなそわそわした様子が、さらにこの作品のモダンさを強調するようで、ここはもうソフィア・コッポラ監督の意図が成功しているといえるでしょう。
彼女の周囲の圧力や、政略結婚での苦悩、恋、それらを贅沢をする事で紛らわせていこうとする様子はもう一つ、迫力に欠けましたが、全体に、さらりとして身近な世界として皇室を描いている作風からして、ここはその程度でいいのかもしれません。
途中で「並木を植えましょう」という彼女の要望に一方でフランス国家の財政が逼迫していることを知るや、小さな木から始めましょうと、控えるあたりの慎ましやかさも非常に好感。
まるで歴史の悪女のように描かれ続けてきたマリー・アントワネットの姿に、非常に純粋で、清純な風を当てたようなできばえは成功ではないかと思います。
ラストシーン、大きく育った並木をみて「さよならを言っています」と夫に告げるあたりが妙にもの悲しい。
映画としてはそこそこにいい作品ですが、個人的にはあまり好みではない作品ですね