くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ブラッド・ダイヤモンド」

ブラッドダイヤモンド

映画というのはまず第一に、観客をスクリーンに引きつけなければいけません。いくら描きたいテーマが重いものであっても、最期まで作品を見てもらわないとテーマを伝えるどころではないからです。

この「ブラッド・ダイヤモンド」はその点で素晴らしい映画でした。

冒頭、アフリカの静かな村。素朴そのものの村に一人の黒人ソロモン(ジャイモン・フンスー)が歩いてきます。そこへ一人の少年が駆け寄ります。ちょうど高校生くらいでしょうか?

父が言います「今日はどんなことを学んだんだ・・・」
息子が「数学、英語・・・」と答え、まさに微笑ましい光景から物語は始まるのですが、そんな光景の向こうに数台のジープが見えてきます。そのジープを見た父親が突然「走れ!」とさけぶのです。

とたんにカメラは大移動撮影で父と子供が逃げる場面をおいます。ジープからは黒人たち、さらに子供までもが機関銃を乱射し、その村の人々を皆殺しにし始めるのです。反政府軍RUFたちです

この導入部の素晴らしいこと。映画は一気にアフリカにおけるダイヤモンドに絡む殺戮の実体をスクリーンにぶつけてくるのです。
ここで画面に釘付けにされた観客は、このシーンに続くストーリーに引き込まれてしまいます。

冒頭のショッキングなシーンから、時を経ずしてアーチャー(レオナルド・ディカプリオ)のダイヤモンド密輸の物語が絡んできます。そして、適切な長さで、アフリカにおけるダイヤモンドの採掘権にまつわる紛争問題を考える会議の場面が挿入されます。

こうして、主人公アーチャーとソロモンの物語が始まるのですが、そこにいつの間にか登場してくるマディ(ジェニファー・コネリー)というジャーナリストがさりげなく物語に主題性を持たせてくるからおもしろい。しかも、ちょっとしたところで彼女が主人公2人を助けるところもあって、なんとも絶妙の脚本ですね。

物語の本筋は、ソロモンがRUFに捕まりダイヤモンドの採掘現場で一個のピンクダイヤの原石を発見し、人目を盗んで土中に埋めて隠すのですが、そのダイヤモンドのことを留置場でたまたま聞いたアーチャーがソロモンに接近し、梅田場所を聞き出そうとする話が中心になります。

利権や家族の愛、アフリカの現状、ダイヤモンドにまつわる悲劇などがきっちりとはめ込まれた物語の中で訴えかけてきます。もちろん、そこにはアーチャーとソロモンの友情さえもが生まれてきて、ラストに向かうにつれて人間ドラマとしての一面も見せてくるから、なんとも形容しがたい感動に包まれるのです。

アフリカに一度住んだら、その素朴さと自然に惹かれて、二度と都会に帰りたくなくなるという話がありますが、この「ブラッド・ダイヤモンド」を見てみると、本当のアフリカの悲劇が見え隠れし、表と裏を全く理解していない日本、ヨーロッパアメリカなどの先進国の貧相な知識をまざまざと知らされます。このあたりは「ホテルルワンダ」にも共通するものかもしれません。

ラストシーンは、見事に泣かされますよ。それにうまい。良い映画に巡り会えた日でした