やってくれました、堤幸彦監督。別に壮大な歴史ドラマを期待していたわけでもなく、ハリウッド映画につきものの見事なCGアドベンチャーを期待していたわけではない。しかしながら、この映画は本当に楽しめた。
いわゆる冒険娯楽活劇。かつて、世界中の映画会社が競って作っていた物語である。
とにかく、おもしろい。肩が凝らない、しかも単純明快。気分爽快な映画であった。
もちろん、おもしろさの陰には監督の演出の力量があるし、俳優の演技力もあるし、脚本のすばらしさもあるのである。でも、阿部寛以下俳優陣も楽しく演技をしている。
そもそも、演技力にはあまり定評のない俳優ばかりであるが、物語が最高に胸躍る。
江守徹のナレーションも的を得ているし、最初のクレジットに至るまでのつかみの部分も見事なものです。
突然現れるやたらでかい万源九郎(阿部寛)、盗賊に捕まって悲鳴を上げる村の娘(前田愛)、そして、いきなり始まる剣劇、背後に流れる江守徹の何ともタイミングの良いナレーションから、宇宙船が沼に墜落する場面へ。
そして「物語は少し時間をさかのぼる」というナレーションが入って、クレジットが始まる。何とも小気味良いスタートである。
あとはもう、ばからしさも何の園で、やりたい放題に物語が進んでいくのだから、浮き世のややこしいことなんか吹っ飛んでしまうのだ。
物語の本筋は、世界中に散らばったオルハリコンで作られた三種の神器、それをすべて手にすれば強大な力を得ることができる。しかも、うち二つは日本にある。
とまぁ、ここまで荒唐無稽な物語を作り上げたのが夢枕獏。それほどあっと驚くほどのオリジナリティはないものの、活劇映画にするには十分な設定である。
でてくる怪物も何とも、仮面ライダーやゴレンジャー(古い)にでてくるような怪人のごとく、着ぐるみやごてごてした化粧で作られた忍者たち。
でも、こんな設定だけではあれほどおもしろい活劇にはならないはずである。ふと、我に返って冷静にみてみると、堤幸彦の演出のうまさが随所にみられることに気がつく。
じっと、据え置きで撮っているかと思うと、大きくクレーン撮影に切り替わって、俯瞰に変わる。あるいは定位置から撮っていたアングルから、素早く横に動くハイスピードシーンが続く。まったく、映画のリズムを完全に心得た見事な演出なのである。
長谷川京子の演技下手をものともせず、阿部寛の横柄さも、宮藤官九郎の素人丸出しの演技、突然本筋からナレーション入りで消えてしまう黒木メイサの天草四郎伸す型なども脇に寄せてしまうほどに、本筋を徹底的に追い続ける骨太の展開を作り上げた見事さに脱帽。
何度も言うが、とにかくおもしろいのだ。それにここまで冒険伝奇活劇を徹底的に描ききった作品は最近では全くなかったのである。お見事。