くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ゲゲゲの鬼太郎」「バベル」

ゲゲゲの鬼太郎

ちょっと期待の「ゲゲゲの鬼太郎」、とはいっても日本のアニメの実写映画化でかろうじて成功していたのは「キューティハニー」くらいのもので、それ以外は惨憺たる代物だったので、かなり不安でした。

宣伝フィルムを見る限りでは、かなりのスピード感のある映像と、エンターテインメント性十分の仕上がりっぽかったので、わくわくして見に行ったのですが、なんともお粗末なのが、本木克英監督の演出力の弱さ、井上真央のスクリーン女優としての弱さ、ウェンツ瑛士のカリスマ性のなさでした。

相対的に、もう一つ起承転結のない展開で、どこからが見せ場で、どこからがつかみでどこからがいよいよクライマックスかというわくわく感がほとんど見られないのです。テレビドラマそのまま的な大きさのない作品でした。

立ち上がりのタイトルバックのところは、なかなか見せてくれるのですが、登場人物の中でスクリーン映えする個性を見せているのは田中麗奈くらいのもので、あとのキャストはテレビドラマそのまま。そもそも井上真央はテレビドラマでこそ魅力があるのですが、スクリーンには不向きであることは前々から思っていたので、期待はしていなかったのですが、ウェンツ瑛士がもう少し”鬼太郎”のカリスマ性を見せてほしかったですね。

物語に抑揚がないのは脚本の弱さでしょうか、さらに水木しげるさんのカリスマ性を出すには「キューティーハニー」のように思い切った吹っ切りが必要だったのではないですかね。

水木しげるさんの原作物でちょっと古いですがテレビドラマに名手入る「悪魔くん」などを見て、もう一度勉強し直して作るべきですね。残念。

あんまり残念だったので話題の「バベル」をはしごしました。

こちらはとにかく、しんどい。宣伝では、一発の銃声が引き起こす、壮大な物語というふれこみでしたが、なんせ、最初から最後まで、人間がいやになるほどに嫌悪感丸出しの世界。見ていて、あまりにも世の中が殺伐としてくるようでいやになってきてしまいました。ラストあたりでは気分さえ悪くなりました。

冒頭シーン、モロッコの山中の小さな一家族、ライフルを購入し、それで羊に迫るハイエナを追い払おうと考える家族の姿が映されます。
いわゆるそのライフルこそが、事件の発端になるのですが、それに続くライフルを預かった幼い(といっても少年ですが)兄弟の、ほんのわずかな確執、そして、観光客として登場するブラッド・ピット(何でブラッド・ピットを起用したのか不明)の夫婦の諍い、そもそものライフルの持ち主役所広司とその娘菊地凛子の溝、なんとも出てくる登場人物すべてが、あまりにも寒々しいのです。

要するに、言葉が通じない国で事故に遭うブラッド・ピット夫婦、聾唖者の娘として登場する菊地凛子の、あまりにもステロタイプ化された日本の女子高生の描き方、そして息子の結婚式に出るために仕方なく、預かっているブラッド・ピット夫婦の子供たちをつれてメキシコへ行く乳母、それぞれのエピソードには言語に対する執拗なこだわりがある。

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督は、そうしたいくつかのエピソードを絡ませながら、そして、つながりを描きながらも、結局それぞれは接することがないという世界を描いているのです。
短いシーンとカット、そして、頻繁に挿入される荒涼とした土地、殺伐とした東京の都会、ほこりっぽいメキシコの景色等々、今の世界は所詮、こんな状態なのだと言わんばかりに迫ってきます。

殺伐とした今の世の中に生きている人々の寂しさ、そんなシーンの連続を見ていると、はっきり言っていやになってきます。
救いのないドラマ。出口のない寂しさ。救いようのない未来。あまりにもつまらないじゃないですか。

数々の作品賞を総なめにした傑作かもしれませんが、私はあまりすきではありませんね。