くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「プレステージ」

プレステージ

謎解き映画でその手腕を発揮しているクリストファー・ノーラン監督の「プレステージ」、19世紀のマジックの世界のお話である。といっても、マジックの世界はあくまで背景で、中心になる話は愛する女性を殺されたライバルに対する執拗なまでの復讐劇を描いている。

そもそものふれこみから、決して隅から隅まで見逃してはいけないという宣伝なので、ファーストシーンの帽子がたくさんうち捨てられている場面から目を凝らしてみていた(つもりでした)

マジックの種明かしを含め、時間の前後、空間の前後、舞台の前後が交錯し、最初はかなり物語と人間関係を把握するのに苦労しました。

次第に、物語の展開がわかってくるようになると、それにつれて、どこかに埋め込まれているのではないかと思えるトリックを探しながら、結構楽しめる作品でした。
物語を掻い摘みながら感想を書いていくとネタばれになるのでかけないのですが、非情に丁寧に畳み込むように盛り上げてくる演出で、混乱することもなく、最後まで引き込まれる内容でした。

途中に、エジソンの非道を訴える場面がさりげなく挿入されたり、当時の人々のマジックに対する感情がかいま見えたりと、時代背景の演出にもなかなか、しっかりした者もあるので、単純な謎解き映画としてのエンターテインメントで終わらせないところが大変好感度です。

後半部分、瞬間移動のマジックがその本筋になるにつれ、まるで「ザ・フライ」を思わせるような装置まで登場し、19世紀末の科学と魔術のまだまだ区分けされていない人々の様子が見事に物語に反映され、それがまた、物語にリアリティと格調の高さを生むことになっています。

ラストのすべての謎があかされる段になると、どこかしら、そうなのではないかと思っていた自分の隠れた心の部分が露呈したようで、やられたという意識より、やっぱりの感想の方が強くなったのはちょっと残念でしたね。

とはいっても、全編、非常にまじめないい作品でした。
心残りは、ファーストシーンの帽子の場面で「しっかりごらんください」の字幕の意味が、実はあの場面に何か見落としたものがあったのではなかったかと思うばかりです