いつまでもゆっくりと見ていたくなる映画、それがこの「天然コケッコー」です。
島根県の片田舎、小学生から中学生までが一つの学校で勉強するような過疎の町。
町には、これといってスーパーもないし、おしゃれな店もない。どこへ行くにも歩いていけば行けるような、かつての日本の原風景のような町を舞台にした、ほのぼのとしたお話。
主人公は中学二年生のそよ(夏帆)、本当に素朴そのものの彼女の周りにこれまた、素朴なままで大きくなっていくような中学生や小学生がいる。
物語はここに、東京から一人の中学生が転校してくるところから始まる。
ふつうなら、この転校生を巡って、崩れていく原風景を描いていくところなのだろうが、なぜか、いつの間にか混ざらないようでとけ込んでいく様子が本当にほほえましくもあり、妙に安心感を持ってみていられる。
劇的な話もない。複雑な大人のドラマが絡んでくるわけでもない。子供達のいがみ合いもない。淡々と、こんな子供時代だったような懐かしさと、なくなってほしくない風景が展開していくのです。
これといって取り立てるほどのカメラワークがあるわけでもなく、こりにこった映像づくりもない。ひたすら、演じている少年少女達、その町の人たちの姿がスクリーンに展開していきます。
これほど、平坦そのものの映画にも関わらず実はこの映画は二年近くもかけた大作である。そこがまた、丁寧に作り込んだ味がしっかりでている
安心して、ゆっくりと画面を見ていられるいい映画。それがこの「天然コケッコー」でした。