くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ミス・ポター」「スキヤキウェスタン ジャンゴ」

ミス・ポター

時々書いているのですが、映画にはいい映画というものがあります。
特に作品の質が高いとか、傑作とかいうたぐいではなく、見ておいて決して損ではない映画ということです。

そんな作品がこの「ミス・ポター
あまりにも有名なピーターラビットの原作者の物語です。

これほど有名な人なのに、今まで映画になっていなかった理由。それは今回の「ミス・ポター」をみれば歴然、順風満帆に近い人生だったからです。
小さい頃から動物の絵を描くのが好きで、その動物に語りかけながら、チョッキを着せてみたりして擬人化した優しい絵をたくさん描いてきました。

そんな主人公ビアトリクス・ポター、やがて、大人になり、女になり、持ち込んだ出版社で、気に入られて世に出ます。そして、そのまま絵本だ大ベストセラーとなっていくという物語、もちろん、その陰にはいろいろあったかもしれませんが、波乱の生涯なら作りやすいでしょうが、せいぜい、婚約者の病死くらいしか見あたらない。

だからこそ、今まで映画に取り上げられなかったのでしょう。
でも、みておいていい映画ですよ。本当に優しい。それに、映画がなければこのピーター・ラビットの原作者の半生なんて知ることはないんじゃないでしょうか。

主演はレニー・ゼルウィガー、「コールドマウンテン」の演技以来、彼女の演技の大ファンの私は彼女をみたくて、見に行ったようなものです。

美しい、イギリスの自然と、優しい主人公のほほえみ、そして、まだまだ礼儀正しく汚れていない古き良き周りにいる人々。
あの名作が生まれるのに当然と思えるような一人の女性の半生が、きっちりと描かれていきます。

映画としては全く凡作です。でも、それでいいんじゃないですか?大作話題作の陰でひっそりと上映している映画、それでいて、みてよかったと思える映画、それがこの「ミス・ポター」です。

さて、もう一本はなんとジャパニーズマカロニウェスタンとふれこみで登場した三池崇史監督の「スキヤキウェスタン ジャンゴ」

もう思いっきりパロッた映画、ここまでやるかという、お遊び映画、しかも、それ以上でも以下でもない平凡な作品。

いきなり、クエンティン・タランティーノがガンマンででてくる。
次のシーンでは鳥居に首つりしたいがぶら下がっていて、そこへやってくる主人公伊藤英明、{??これって、荒野の用心棒?}
と、思っていたら、次の瞬間、空っ風の吹く宿場町のところで突然、ガンマンの前と後ろに大勢のやくざものが現れ、どっちの味方に付くのか値踏みをする。
{これって??用心棒??}

と、この辺までみたら、もうこの映画はそういう路線なのだと腹をくくるのである。

後は、基本的には「用心棒」と「荒野の用心棒」を混ぜっこにしたような物語の合間にどっかでみたような映画のシーンが挿入されて、所々にサイケデリックな三池監督の演出が埋め込まれる。

一つ一つのシーンがかなりくどいので、もっとスピーディに観客を引き込んで、おもいきりおちゃらけで見せてくれた方がおもしろかったと思う。
2時間以上の長尺にしなくても1時間30分程度で、娯楽に徹したら、ラストシーンももっと生きてきただろうにと思うのですが、作りたかったのでしょうね、懐かしいマカロニウェスタンを。

伝説のガンマンがでてくる下りは完全にアニメオタクの世界、香川照之の演じるコミカルな保安官は香港映画の世界、クライマックスの激しい銃撃戦はサム・ペキンパーの「ワイルド・バンチ」の世界と、なんともてんこ盛りの全編、マカロニの世界なのですよ。

でも、よかったのはラスト、去っていくガンマンの背後に流れる北島三郎の「さすらいのジャンゴ」がなんとも、ぴったり。

もっと丁寧に作って、シリーズにするのも一興だったような気もしますがね。