かなり酷評、しかもみて良かった映画のアンケートでもかなり低い。しかも私があまり好まない黒人主演の作品ということで、今日まで見に行かなかった。たぶん見に行かないつもりだったが、もしかしたらの予感の中で重い腰を上げて見に行く
感想は予想以上に良くできたいい映画だったということ。
懐かしいオーソドックスなSF映画であったことだ。
やたら奇抜さや、シュールな展開を多用するようになった最近のSF映画であったが、懐かしい、勧善懲悪の中に、密かに忍び込む現代の人々の不安を見事に織り込んだ作品に仕上がっていました。
そもそも原作はリチャード・マシスンという人。誰?と思われる方にちょっと説明すると、「縮みゆく男」という名作SFを第一作に、小説家、そして名脚本家として活躍した人です。
トワイライトゾーンシリーズのメインスタッフであり、スピルバーグの「激突!」の脚本と聞けば、あぁあの人かと思ってしまうほどの才能あふれる人です。
そんな原作を元にしているのだから、単純な物語ではないであろうし、三度目の映画化になる今回は、かなりの力が入っている。
前二作はどちらかというとB級SFとして完成された作品でした。しかし今回はSF大作として取り組まれているところから、スケールが格段にアップしています。
勿論CGなどの技術の進歩もありますが、ゴーストタウンになったニューヨークの町などは全面封鎖で撮影してみたりとアナログ的な努力も怠っていません。
そんなフランシス・ローレンス監督以下のスタッフの努力と、丁寧に書き込まれた脚本のすばらしさでそれなりにテーマ性がはっきりと打ち出された秀作に仕上がったようですね。
この原作を元にした三本の映画はそれぞれが、当時の時代背景を表していると解説に書かれていますが、まさにそのとおり。
すでに冷戦もなく、ベトナム戦争も終わり、アメリカ国民の恐怖はテロ集団へと時代が移っています。
ウィル・スミスの好演と脇役ででている犬の存在のうまさ。そしてそれぞれのエピソードの挿入のタイミングと展開は非常に練られています。
練り込まれた脚本ゆえにクライマックスが嫌味もなく人々の胸にテーマを訴えてきます。
基本にのっとったSF大作、今となっては古いパターンゆえに、指示されず評価も低かったのかもしれませんが、こんな映画こそ、もっと正当に評価すべき作品ですよ