くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ラスト、コーション」

ラスト、コーション

アン・リー監督作品、ヴェネチア映画祭グランプリという傑作「ラスト、コーション」をみた。

第二次大戦下の香港、上海を舞台に抗日運動に走る学生の一人と、傀儡政権下のスパイのトップ、イーとのエロティックなラブストーリーである。
とにかく、ベッドシーンがかなり濃厚で、下手なAVよりもよっぽどどきどきしてしまいました。

物語は香港大学の演劇学生達の会話から始まります。
抗日運動に燃える彼らは、祖国を売っている裏切り者イーの暗殺を計画します。
最初は、学生的なのりであった物がいつの間にか、真剣な活動に変わり、一人の女性ワン(タン・ウェイ)が接触することになります。

このタン・ウェイという女優さん、とにかくきれいですね。もうほれぼれしてしまうほどの美人でイー(トニー・レオン)が虜になるのもわかるような気がします。

それとなく近づいているうちに愛人になり、イーとの一夜を目前に、彼女は男性のあしらい方を仲間達の一人と行います。つまりセックスの仕方を学ぶという、あまりにも切なすぎる展開に胸が痛くなりますね。

しかし、突然のイーの上海転居で、ワンの覚悟は無駄になってしまいます。
それから三年後、再び、イー暗殺の計画に誘われたワンは再度イーに接近。しかし、いつの間にか計略は本当の愛に変わりつつあるのを感じ始める。

このあたりの人間心理の変化をさすがにアン・リー監督は見事に描いていきます。

そしてクライマックス、はたして、愛しているがためのワンの行動だったのか、今まで、道具のように彼女に命令してきた抗日運動仲間への復讐だったのか、結局悲劇的なラストへとつながるのです。

流れるようなカメラワークの中に時折見せる手持ちカメラのようなぎこちないシーン。仲間達を追うワンの視線の動きに沿って流れる街の風景。美しくも濃艶な愛の物語の結末への展開。非常に完成度の高い傑作ですが、どうもラブストーリーは私には合わないようでした。