くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ノーカントリー」

ノーカントリー

第80回アカデミー賞4部門に輝いたコーエン兄弟のサスペンス「ノーカントリー」を見る。
内容はほとんど不明で、サスペンスらしいという程度だったこともあり、しんどいのではないかという不安から期待半分の作品。とはいえ、映画ファンとしては見ておかないわけにもいかず・・・と、本日出かける。

とにかく、サスペンスフルな展開が、半ばコーエン兄弟ならではの芸術色あふれる映像表現で展開する。といっても、いつものハリウッド映画とは違って、派手などんぱちやらカーチェイスよりも、淡々と、ストーリーが進んでいくのだから、これが芸術作品化なんて思ってしまう。

いきなり、保安官を背後から絞め殺す犯人。まさに血も涙もない猟奇犯的な挿入部分から物語がスタート。まるで、B級のホラーのような展開へ進んでもいいようなものだが、ここはさすがコーエン兄弟、脚本が緻密。

つづいて、酸素ボンベのようなものを持った犯人が、道端の男を一気に殺戮、一方で、この物語の主人公が、大金を発見する場面へと展開していく。

考えも付かない展開から、いつの間にかこの二人が追いつ追われつの関係になり、一見異常犯のような追跡側の人間は、実は知能的に終われる人間を見つけ出していくあたりが、そんじょそこらのサスペンスとは違う。

コーエン兄弟の映画は非常に画面の構図にこるという特徴もあり、ただのはらはらどきどきの合間に見事な画面作りを堪能させてくれる。さらにこの作品のテーマをトミー・リー・ジョーンズに語らせるという手法で、奥の深い内容に持っていくあたりがにくい。

犬のように首輪をつけていた老人を殺したという新聞の記事の紹介などをとおして、原題のアメリカ、しいては世界中がまったく違う世界へと変貌していく様子を的確に語っていく。まさに、名脚本なしにはなしえない、高レベルの映像芸術である。

ラストはあっけないものの、その奥に見せるなんともいえないテーマ性が、アカデミー賞を呼んだ理由であろうと思います。