くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「王妃の紋章」

王妃の紋章

とにかく豪華絢爛とはこのことです。
極彩色の中国王朝の宮殿のシーンに冒頭から圧倒されてしまいます。
真紅と呼ぶにふさわしい赤、まばゆいばかりの黄色、透き通るようなコバルトブルー、それぞれが風のように、画面上を吹きすさんでいきます。

出だしは、あの名作「紅夢」「菊豆」を思わせる、しゃんしゃんという太鼓の音、鐘の音に始まり、原色の衣装を身にまとわんとする宮廷女官達の姿が画面いっぱいに繰り広げられます。まさに、チャン・イーモウコン・リーのコンビの作品であることがこのファーストシーンから訴えかけてくるようです。

続く場面は、密かに毒薬を少量づつ飲まされているらしい主人公の王妃(コン・リー)。
そして、その周りの子供達の関係が、脚本の中で観客に紹介されていくところが見事。
やはり、中国の映画は登場人物の名前が覚えにくいので、このあたりの基本的な手法で書かれた脚本がいちばんいいですね。

そして、物語は少しづつ、その本筋が見え隠れしながら、クライマックスへと流れていくのですが、その間に見せる忍者同士のような派手なアクションシーンや、スペクタクルなCGシーン、サスペンスフルな駆け引きは見事です。

ここまで壮大なシーンを続けていくと、途中で食傷気味にだれてしまうものですが、その辺は全くない。
10年ぶりでしょうか?チャン・イーモウ監督とコン・リーのコンビによる作品は。
つまり、コン・リーが生き生きとスクリーンを彩るのです。物語を引っ張っていくというべきでしょうか?最近のほかの出演作では全く生きていなかった大女優が、さすがにチャン・イーモウの演出でその存在感をもう一度示してくれました。

やはり、チャン・イーモウにはチャン・ツィーやジェット・リーでは今ひとつリズムが乗っていないようでした。確かに、「HERO」も「LOVERS」もいい作品ですが、やはり、チャン・イーモウは「紅夢」「菊豆」の映像美と、映像リズムがいちばんですね。

ところで、今回の「王妃の紋章」のアクションシーンはこれまた見事でした。
初めて忍者集団(わかりやすいのでこの表現にしますが)が大挙して蒋医師の赴任先を襲撃する場面。カメラがぐーっと回転しながら寄るシーンはまさに「七人の侍」。

そして、まるで西部劇を思わせるような渓谷の中での襲撃シーンのエンターテインメント性のすばらしさ。クライマックスの「トロイ」を思わせる群衆シーンの見事さ。本当にチャン・イーモウが巨匠としてのチャン・イーモウそのものでした。

見応え抜群の超大作でした。