この映画に理屈なんてない。
前半、ほんの15分ほどたって、パコ(アヤカ・ウィルソン)が登場するあたりから、もう涙が止まらなかった。
最初は涙が流れるままに見ていたのですが、そのうちハンカチで押さえないと見ていられない。しまいにはいすを揺らすほどに慟哭してしまうほどに涙が出てくる。
途中何度も吉本新喜劇を思わせるようなぼけとつっこみも入る。そのたびに爆笑してしまう。目が覚めるようなCGグラフィックが展開する。中島哲也監督お得意のサイケデリックな世界が所狭しとでてくるにもかかわらず、そして、非現実的なファンタジーの世界が繰り広げられるにもかかわらず、涙が止まらない。
パコと大貫(役所広司)とのやりとり、そしてしだいに人間的に変わる大貫の姿、パコの愛らしさ。「パコのほっぺに触った?」「今日はパコの誕生日なの」等々なんども繰り返されるせりふ、少しずつ明らかになってくる患者達の半生。
物語の中でパコが読む絵本が患者達の人生に重なっていく展開。
と、必死になって、冷静にこの映画の感想を書こうとするものの思い出すたびに自然と涙があふれてくる。
中島哲也監督は天才的なリズム感の持ち主なのだろうと思う。繰り出されるギャグやあまりにもありえないような人物の姿、そしてセット。とても感情移入するには似つかわしくない設定にも関わらず、現実的にすっかりはまりこんで、あふれる涙をこらえながら物語に引き込まれている。
しかも、予想されるラストに自らの胸を熱くして、そして、感動のピークに達したあとに、さらに突き落とすようにあまりにも切ないラストシーンが用意されているのです。
こんなに泣ける映画、記憶の中ではチャップリンの「街の灯」しか思い浮かばない。
なぜ、ここまで泣けるのか、なぜ、ここまで胸にしみるのか。傑作とか秀作とかの平凡な評価など当てはまらない大好きな映画になりそうである。
おもえば、キャストを見ればこの物語がいかに素晴らしいかわかりますね。
アヤカ・ウィルソンは初めてですが、ほかに役所広司、妻夫木聡、土屋アンナ、阿部サダヲ、加瀬亮、小池栄子、劇団ひとり、山内圭哉、國村隼、上川隆也 どの人をとっても一人で、主役を張り、大ヒットさせるだけの実力とカリスマを持った人たちばかり。
この人達が、この映画にでようと集まるほどこの物語には魅力があったんですよ。
もし、おかしな理屈を付けて、この映画を見ないつもりの人たちへ、とにかく、映画歴30年の私の感想を信じて、ごらんになってみてください。
お子さんと一緒ならそれぞれの感動が、一人なら、その感動がきっと胸を包むと思います。