くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ウォンテッド」

ウォンテッド

ロシアの奇才ティムール・ベクマンベトフ監督のハリウッド進出第一作「ウォンテッド」を見てきました。

「ナイトウォッチ」で見せた独特の映像感覚と音に対するオリジナリティあふれるリズム感は今回の「ウォンテッド」で爆発。しかも、冒頭のつかみの部分から一気に本編へ引き込む中で、思わず苦笑いさせるユーモア感覚を滑り込ませる個性は、今までのアメリカ映画にない感覚です。

ウォシャウスキー兄弟の「マトリックス」を見たとき以来の衝撃的な映像世界、しかもあれ以上に全編がめまぐるしいほどのスピード感と絶妙のテンポに彩られている。
信じられないハイスピードかとおもえば、スローモーションと思わせられないほどのスローモーションの多様。さらに、まるで自分がその場にいるような感覚でカメラアングルを利用する独創性。まさに、新しいビジュアル監督の登場でした。

ストーリーはもともとがアメコミゆえに、勧善懲悪の単調な物になるところなのですが、大胆にその設定を変え、そこに、複雑な人間関係を挟み込んだ上で、完全なアクションエンターテインメントに仕上げる。
しかも、弾道を曲げるというような映像世界をスクリーンに具体化するためにキャストのアクションを、今までにない動きで見せてくる。

次から次と展開する斬新という言葉がぴったりのビジュアル世界は、もっと続けてほしいと思わせるほどの見事な娯楽性を兼ね備え、ストーリーも単調なクライマックスにすることなく、あっと思わせるラストから、エンディングと、最後まで観客を話しません。

まるでアンジェリーナ・ジョリーの映画のごとく宣伝していますが、主演はジェイムズ・マカヴォイというあまり聞き慣れない俳優さん。「ナルニア国物語」でタムナスさんという半獣を演じた人です。
その個性的で、頼りなさそうな風貌が、先入観を吹き飛ばして物語に深みをもたらします。

なにもかもが見事にコラボレーションし、音と映像を巧みに組み立てたまさに傑作エンターテインメントです