くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「落下の王国」

落下の王国

ザ・セル」で衝撃的な映像でデビューしたインドのターセム監督の第二作「落下の王国」を見る。

ザ・セル」を見ていなかったので、ターセム監督の映像世界はまったくの初体験、いきなり昔懐かしいサイレント映画のようなシーン、凝りに凝ったタイトルバックに続く映像世界は、なるほどとうならせるに十分な個性的なビジュアル世界である。

物語は昔々、まだ映画がサイレンとであった時代、ロスアンゼルスのとある病院に入院している足を骨折したらしい映画のスタントマンの青年と、腕を骨折して入院している5歳の女の子のなんとも不思議な交流を描いた、いわばファンタジーである。

この青年が語る冒険物語を少女が自身の心の中で再現し、それが美しい映像世界となってスクリーンから私たちの前に現れてくる。
中国映画の様式美の世界とはまた一風変わった独特の極彩色の世界が展開する。これがターセム監督の世界かと引き込まれてしまう。

赤茶けた壁のような砂漠、真っ青に塗られた町並み、幾何学的に見える階段の数々、絵に描いたような珊瑚礁の島。また一方で、グロテスクなほどにリアルな殺戮シーンや不気味なほどに印象付けられる人形のカットなど、好きな人にはたまらないでしょうが、かなり癖があるので、ついていけない人もいるのではないでしょうか。

自殺をするための薬を言葉巧みに取ってこさせるために、冒険物語を少女に話し聞かせるスタントマンの青年と、そんなことは露も思わず、ただ話の続きが効きたくて一生懸命薬を取ってこようとする純真な少女。やがて、物語はふとしたことから青年を立ち直らせ、少女もひとつ大人になって終わります。

劇中劇のように展開する架空の物語が現実の人物と重なり合わさり、少女の希望と青年の語りが透き通るようなビジュアル世界を形作るとき、この映画の醍醐味を肌で感じます。

確かに美しいですが、ちょっと、内容が振動ですね。でも見終わったあと、だんだんと心の中で膨らんでくるような、見事にスケールのある映画だと思います