くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「秋深き」

秋深き

織田作之助が描いた浪速の純情夫婦ドラマ「秋深き」
なんといってもサトエリちゃんがかわいらしい奥さんを演じています。

夫婦善哉」を代表作品にしているオダサクさんですが、今や薄れ始めている人間通しの人情味あふれる物語は、やはり今の時代も十分に心を打つ物がありますね。
クラブのホステスに惚れ込んでしまったまじめ一方の中学教師、オダサクさん得意の放蕩息子で、ただひたすら入れ込んだ末に位牌を片手にプロポーズ。

佐藤江梨子演じる一代がなんともいえないほどに愛らしい。
サトエリちゃんの容姿も本当にチャーミングでかわいい上に、プロポーション抜群とくるから、このドラマの役柄にはまさにはまり役でした。しかも、彼女、演技が抜群にうまい。関西弁を見事に自分の物にしてなんの違和感もなくオダサク独特の大阪の人情物語を演じきります。

もちろん相手役の八嶋智人さんもこれまた単純そのもののオダサクワールドの夫を見事に演じきります。周りを固める役者の演技も、賞賛するほどに素晴らしい。
やたら、やきもち焼きで、しかも一途、さらに、勧められる物には何の疑いもなく信じてしまってだまされている。しかし、惚れ込んだ一代には盲目に近いほどの愛情を注いでしまう。まさに演技賞物です。

一方のサトエリちゃんもこれまた、愛くるしくて純情な一方で、非常に賢い。夫のいないところで陰になって一生懸命夫のためを思って行動している姿が、これまた涙ぐましいのです。

監督は池田敏春、一部に熱狂的なファンが存在する奇才ですが、淡々と描く彼の演出の中にオダサク原作の懐かしい素朴な夫婦愛が見事に描かれていて、悲しい物語なのに、どこかほほえましく、暖かくなって劇場をでることができました。