くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「リダクテッド 真実の価値」

リダクテッド真実の価値

ブライアン・デ・パルマ監督最新作にして、全米で完全に無視されたといわれる問題作品である。

この作品はフィクションであるというロゴから始まるこの映画、実話をもとにして、ドキュメンタリー映像タッチで再現したフィクション映画なのです。
そこにはいつものブライアン・デ・パルマの流麗なカメラワークも独特の映像美の世界もありません。

Youtube、ニュース映像、プライベートフィルムの形式を流用し、その組み立ての中で、イラク戦争で起こった少女レイプ殺害事件とその報復事件を映し出していくという、ドキュメンタリーフィクションとも名づけられる作品なのです。

したがって、ブライアン・デ・パルマ監督が、「再現しています」と、説明なしに見たら、ただのドキュメンタリー映画なのですが、そこは、あくまでフィクション。俳優さんが演じているし、画面の切り替え場面にワイプの効果や、背後にサラバンドを流すなどして、作られた作品としてつづっていきます。

見ているうちに、なんともアメリカ人兵士はここまで腐っているのかと嫌になってくるシーン、せりふがふんだんに登場します。そして、いつ、どこにいても自分たちは正義であるという驕りが随所に見られる言動にはまったく辟易してしまいました。

つまり、そこをパルマ監督は描きたかったのでしょう。
ベトナム戦争で思い知ったはずなのに、まだ懲りずに同じことを繰り返しているアメリカ人の実態を国内に示したかったのだと思います。

さらに、ベトナム戦争時には世論や学生たちが大運動をし、時の政府を動かしましたが、そんな気概も今の国民には存在しない。さらに、ベトナム戦争の失敗を繰り返さないために報道統制で真実を伝えないアメリカ政府の実態も訴えたかったのでしょう。

正直、あまり興味のない内容ではありましたが、ブライアン・デ・パルマ監督が作ったとなればそちらのほうに興味深々でしたので、見に行きました。
しかし、さすが、ここまでの巨匠になると、ドキュメンタリータッチとはいえ、見事なリズム感があって、最後までしっかり見ることができました