くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「マルタのやさしい刺繍」

マルタのやさしい雌雄

久しぶりにいい映画を見たという感じ。こういう映画にめぐり合えるから、映画ファンはやめられない。

なんといっても、やさしい映画です。気持ちが前向きになるさわやかな映画です。見終わったあと、「ぁぁよかったな・・がんばらないと」とおもえる、心に残る映画です。

スイスの片田舎、いまだにどこか古臭い小さな村、そこにすむマルタは80歳。9ヶ月前に夫を亡くして、打ちひしがれている姿から映画が始まります。
一緒に食事をともにした夫、そのナプキンを、今なおテーブルに用意して、食事を済まし、そしえt、ため息をつく。

それから続くタイトルバックは本当にスイスの山々が美しい。

ふとしたことから、村の行事の旗の縫製を頼まれたマルタは、その材料を探しに友達3人を加えて首都ベルンへ。その展開がなんともほほえましく、ここまでのわずかなシーンだけで、ここに住む人々、そして、登場人物たちの関係、家族の現状などをさりげない会話や、目配せ、演出などで紹介してくれます。

さてさて、ベルンに着いた老婦人四人、そして、そこでマルタは若い頃に目指したランジェリーショップ開店という夢を思い出します。
ここからはもう、丁寧に寝られた脚本の繊細なせりふのやり取りと、その脚本を丁寧に生かしていくベティナ・オベルリ監督の演出で、やさしくもほほえましい物語が進んでいくのです。

渡米したこともないのに、渡米したといいながら陽気に都会的な女性を演じるリージ、足の不自由な夫の世話をしながら、どこか、飛び出せないままに、マルタの行き方に共感し始めるハンニ、ありきたりの老人生活にどこかアバンチュールを求めようと、夢見るフリーダ。舞台は古臭い田舎町なのに、後半ではネット通販まで登場する。

派手な展開がないにもかかわらず、登場人物たちが生き生きとしていて、その上、無駄のないエピソードの数々がちゃんとラストに生きてくるから、見終わったあとも、気持ちが癒されてしまうのです。
本当にいい映画ですよ。今お勧めの一本です