くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ワールド・オブ・ライズ」

ワールド・オブ・ライズ

映画はまず脚本があり、それをもとに監督はコンテを作成し、そのコンテをもとにシーンシーンをどれだけの長さにするか、カメラをどの位置に置くか、どんなカメラワークをするかなどを頭に描いて撮影を進めていく。その中に監督の個性が出てくる。

さて、映像派の巨匠リドリー・スコット監督の個性は細かいカットやシーンの積み重ねとハイテンポなカットつなぎをその特色にする監督である。
そしてその映像スタイルと脚本のテンポが見事にマッチしたのがこの「ワールド・オブ・ライズ」でした。

本当に面白かった。次々と舞台が変わって、次はここそしてあそことシーンが変化していく。一方でアメリカ本土から衛星で追跡するラッセル・クロウの姿と衛星シーンが挿入される。

行き詰るシーン展開の間に見せてくるのが、ラッセル・クロウ演じるエド・ホフマンによるテクニカルに武装され、人を人として扱わず、人間を信用しないアメリカ的な先進国の対テロ線と現地ヨルダンの総合情報総局のハニ・サラームが展開する人を使い、機械よりも人と人の通信を重んじるアナログ的な対テロ戦略戦、その二人の間で微妙な心の変化を遂げていくレオナルド・ディカプリオ演じるフェリスの行動が描かれていきます。

子供との普通の生活をしながら合間に冷酷な判断と命令をするホフマンの人間性と、現代の情報戦の不気味さ。
単純なテロ戦略の情報戦のアクションに終始することなく、主人公たちの心の葛藤と変化、そして、それぞれの民族の生の姿をフィクションとはいえ描こうとしたリドリー・スコットの演出力と脚本の見事さにうならざるを得ませんでした。

ラストシーン、衛星からの監視をはずすラッセル・クロウのワンカットがなんとも印象的で、胸を打つものがありました。
一級品の秀作だったと思います。

蛇足ながら、なんとも役作りとはいえ、メタボおじさんになったラッセル・クロウにも注目ですよ