くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アンダーカヴァー」

アンダーカヴァー

公開まえよりちょっと期待していたのですが、見たい映画が目白押しで、今日になりました。

非常によくできたクライムストーリー、というか、家族愛の物語です。
クライムストーリーといえば、「L・A・コンフィデンシャル」がここ何年かに見た中でダントツにすばらしい作品ですが、この「アンダーカヴァー」もなかなかどうして、質の高い作品でした。

なんといっても、音の使い方が抜群にうまい。
冒頭、まず静かなシーンでモノクロームの写真が次々と映し出され、場面が変わると、ポップなミュージック(ブロンディの曲でしょうか)に乗せて、ホアキン・フェニックス演じるボビーが勤めるナイトクラブのシーンに変わります。
雑踏と、どこか犯罪のにおいのするシーンが続いて、兄ジョゼフ(マーク・ウォールバーグ)のシーンへ。このあたりで、父ロバート・デュヴァルとの確執、兄弟のいさかいがそれとなく紹介されて、物語の設定が完成します。

全体の物語の構成は、兄の襲撃事件、犯人の逮捕から脱走、そして父の死そして復讐とだいたい三つの場面で展開していきますが、なんといっても、バックに聞こえる音楽による盛り上がりやリズムの切り返しはもちろん、カーチェイスのシーンでの土砂降りの雨のシーン、などなどのさまざまな日常の音を効果的に画面の中に閉じ込めて、緊張感を生み出す手腕はなかなかのものです。

特に雨の中のカーチェイスシーンは「ブリット」「フレンチコネクション」などの名シーンに引けを取らないくらいに目を見張るものがありました。
手持ちカメラの多用により登場人物の心の動きを映し出す手法など、いたるところに、ジェームズ・グレイ監督の個性が発揮されています。

とはいえ、日本人に理解しがたいのが、1988年ごろのアメリカでの、イタリアンマフィアからロシアンマフィアへ変わりつつある裏の社会の複雑さです。
そのあたりの時代背景というのは、さすがに歴史の教科書で学ぶものではないだけに、わかりにくいところもありますが、当時の生活を丁寧に時代考証し、小道具までこだわっているのを見ると、生半可な警察物語にするつもりはなかったというスタッフキャストの意気込みが感じられましたね。

なかなかの秀作でした