くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「太陽はひとりぼっち」「昼顔」

太陽がひとりぼっち

シネヌーボーのアキムコレクションで、見たかった二本を見ました
まずは「太陽がひとりぼっち」
ご存知、アラン・ドロンの代表作の一本で、ミケランジェロ・アントニオーニ監督の代表作です
画面は、あえてモノクロームを使用し、不毛な愛の行方を表現すべく、殺伐としたシーンが次々と展開します。

普通の映画なら、当然このシーンのあとはベッドインだろうという展開さえも、あえて、じらすように繰り返される主人公たちの行動は、はっきり言ってみているものをいらいらさせてきます。
午前中テニスをしてから見に行ったせいかもしれませんが、正直、かなりまどろっこしくて眠かったです。

冒頭のタイトルバックは、テンポの効いた打楽器による衝撃的な音楽、そして、次第に退廃的な音へと変遷していって、物語の本編に入っていくあたり、まさにヨーロッパ映画ならではの導入部です。
そして、物語はひとつの部屋で、結婚間近の恋人たちのまどろっこしい別れ話の応酬、そしてそれにつ続く、なんとも無味乾燥な舞台、そこで展開されるまどろこしい、恋愛ストーリー、とはいえ、この独特のまどろっこしさ、時折挿入される、不可思議なワンカット、そしてラスト、どこか殺伐とした意味ありげなシーンを次々とすうカット挿入して終わるエンディングなど、まさにミケランジェロ・アントニオーニならではの世界ですね。

いつ眠ってしまうかと思うほど、しんどかったのですが、名作、傑作の誉れ高い一本、見ておいて損はないでしょう。


さて、二本目はルイス・ブニュエルの「昼顔」
これがまた、傑作でした。すばらしいブニュエルの幻想芸術の世界に久しぶりに出会いました。

冒頭から、目のさめるほど美しい紅葉の並木を馬車が走ってくる。しゃんしゃんという馬車の音、寄り添う夫婦、目の覚める景色。そして、馬車が止まると嫌がる女性を男が引き摺り下ろして、さらには気に縛り、鞭で・・・なんと、この女性こそが主演のカトリーヌ・ドヌーブなのですから、なんともショッキングな導入部です。そして、このシーンが主人公の幻想であることが次のジャンプカットで明らかになります。

平然と、挿入される妄想のシーンと、それに重ねる現実の世界の交錯、独特の展開でみせる物語展開こそがルイス・ブニュエルならではの世界です。
しかも、どのシーンもドヌーブの美しいこと。
最初は貞淑な妻セヴリーヌ(ドヌーブ)が、昼は昼顔という名前で娼婦となり、官能の世界に足を踏み入れたとたん、次第に明るい、しかも魅力的な女性に変貌していく様のすばらしさ、服装さえもが、どこかきらびやかなものに変わっていくというこだわりも見事です。

さまざまなお客を通じて次第に変わっていく一人の女性、やがて、衝撃的なラストシーンに向かっていくにつれ、ブニュエルならではの幻想と現実の入り混じったテーマがくっきりと映し出されていきます。

ラストシーンはこと細かくは書きませんが、みごとというほかありません。「FIN」のあとのあの間さえもが、ブニュエルならではのシュールな世界観を見事に表現していました。
もう一度見たくなるほどの傑作でした