老人から子供へと若返っていくという、ありそうでなかった物語を見てきました。
原作は一応あるものの若返るというアイデア程度しかない短編らしく、ほとんどがオリジナルストーリーです。
当然ながら、CGを使った見事なメイクも見物ではありますが、3時間に及ぶ長編にも関わらずその不思議な物語のラストに引き込まれて最後までスクリーンから目を離せない秀作でした。
冒頭、逆回りに回る時計を作るところから物語が始まります。
まるでおとぎ話のような導入部に、あらすじは知っているとはいえ、不思議な感覚で入り込んでいきます。
もちろん、物語の奇抜さだけでは3時間を引っ張ることはできず、20世紀初めのレトロな風景の物語から20世紀後半へとつながる近代的な景色までの撮影の美しさも見所の一つであるし、所々にスパイスのように入れるデヴィド・フィンチャーの見事な演出も見所です。
淡々とストーリーを追いながら、その後半へと続くターンニングポイントである、ヒロイン、デイジーの交通事故のシーンにサスペンスフルなフラッシュバックを導入した脚本のおもしろさ。
後半にはいると、徐々にまるで人生の終演を思わせるようにたびたび登場する夕日のシーンの美しさ。
回想でつづってきた物語が次第に私たちに訴えかけてくる作品のテーマ。人生の瞬間瞬間の時間の大切さ、人と人のつながりの重要性、なにもかもが胸に迫り始め、ラストシーンはあまりの切なさに、いつの間にか涙ぐむ自分に気が付きました。