1982年公開当時はたしか、SABホールの上映であったような気がします。
当時ライナー・ウェルナー・ファスビンダーやヴィム・ヴェンダースなどのドイツの監督が注目され始めていた頃で、このヴェルナー・ヘルツォーク監督作品も公開されていたのですが、見逃していたものです。
当然、リバイバルでみる機会もなくあきらめていた作品でしたが、ケイブルボーグコレクションということでシネヌーヴォーで上映する機会があり見に行きました。
もちろん見せ場は船が山を越えるという圧巻のシーンですが、この作品、脚本の構成が非常によくできています。
冒頭に主人公フィッツカラルドが愛人(クラウディア・カルディナーレ)とオペラの会場へ飛び込むシーンから、オペラに魅せられた主人公が南米アマゾンの奥にオペラハウスを作ろうとするくだり。そのためにゴム園を作ることを思いつきその計画を立てて、同行してくれるベテランのつわものを集めるあたりの前半。そこから原住民からの攻撃にびくびくしながら進む中盤、そしてクライマックスの船が山を越えるスペクタクル、そのあとのラストシーンの爽快さ。非常に組み立てが見事で、2時間40分近くの長尺作品ながら一気に見ることができます。
何の得もなく、ただ自分の夢にひたすら突っ走るフィッツカラルドの姿はまさに子供のような純真さを感じますね。それが映画という夢の宝箱の中で蘇えり、、それを求めて劇場へ足を運ぶ観客の満足感へとつながるのです。
巨大な船が、山上に作られた巨大な滑車の仕組みでぐいぐいと引き上げられていく場面は、もちろんCGなどを使うわけでも、特撮を利用するわけでもなく、そのままリアルに作られているのは本当に圧巻です。
しかし、そのクライマックスのあとに用意された、船上でのオペラシーン、それを見ながら、燕尾服を着て葉巻をくわえ、大きく笑うフィッツカラルドのアップというラストが素晴らしいです。
「おもしれええええ!、きもちいい!」というような口語的な感動が思わず口をついて出てくるような傑作でした