息つく暇もないサスペンスとはこの映画のことを言うのでしょうね。
始まったとたん、黒人の青年があわてて走り抜ける。老人を突き飛ばし、暗い路地へ逃げる逃げる。しかし何者かが彼の前に立ちはだかり、銃弾を浴びせる。
このショッキングな、しかも見事なつかみのシーンから、一気に本編へと入っていく導入部は私の大好きなパターンですね。
続く地下鉄でのシーン、そして主人公カル(ラッセル・クロウ)の紹介、そしてそのあたりの背景の説明は手短に、一気にサスペンスの渦中へ。後はもう次々と二転三転するどんでん返しを追いながらあれよあれよとスリリングな展開が続きます。
もう、最初のつかみから引き込まれたまま、次の展開は?次のどんでん返しはと必死で追いかけていかないとついていけない。しかも、登場人物の名前が非常に似通っているために、最初はかなり苦労しましたが、それもやがて物語の全体像がつかめると後はすんなりとサスペンスフルなスピードについていけるようになります。
いったい、真犯人は誰なのか?目的はなんだったのか?次々と入れ替わり立ち代り、そしてダメ押しのラストの大どんでん返しまで、すっかり楽しませてもらいました。
本当にパッチワークのような細かなカットつなぎがあるかと思えば、ハイテンポの音楽を絡ませてのミステリアスなシーンを挿入し、一方で親友コリンズとの微妙に揺れる主人公カルの心の動きなども、短いながらも丁寧に心理描写を重ね、深みのあるシーンも組み立てて生きます。
監督はケヴィン・マクドナルド、ドキュメンタリーで手腕を発揮し「ラスト・キング・オブ・スコットランド」で見事なドラマを作り上げた監督。なんと祖父はあの名作「赤い靴」の監督エメリック・プレスバーガー。
ま、才能が遺伝するとは言いませんが、なかなかどうしていい作品を作ったものです。
本当に面白い一本でした