くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「真夏のオリオン」

真夏のオリオン

田中麗奈主演で私の好きな作品「はつ恋」や「山桜」を演出、さらに、秀作「深呼吸の必要」を世に送り出した篠原哲雄監督作品でした。

最初、監督を知らずに福井晴敏脚色という名前で、おそらくスリリングな戦争映画だろうと思って見に行ったのですが、そんなことはまったく違う。さすが篠原監督、非常にまじめな、丁寧な戦争映画でした。

もちろん、スリリングなシーンもないわけではありませんが、全体が、非常に生真面目なドラマ性を帯びている。それでいて、退屈さもなく、非常に見事な間の取り方で最後まで観客を離さない。さらに、妙な感傷を呼び起こすようなこともしないから、わざとらしい涙も浮かんでこない。

ラストシーンで感じるまぶたの熱さは、戦争に対する悲劇、いや人間という生き物に対する素直な感動なのである。

知略戦が見せ場のような宣伝文句やキャッチフレーズが横行しているが、そのあたりは絶妙のバランスで押さえられている。さらに、登場人物のセリフが非常に切れがよくはきはきしているために、作品に締まりが出てくるのである。このあたりは明らかに篠原哲夫監督の演出によるものだろうと思う。

戦争映画ながら、非常に優れた人間ドラマであり、命のドラマである。丁寧に描かれた生きた人間の命の物語として、秀作の一本であることは確かである。