くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「それでも恋するバルセロナ」

それでも恋するバルセロナ

今までの道徳心とか、男と女の問題とか、恋愛とか、結婚とか、SEXとかに対する固定観念をすべてをハンマーで打ち砕いてスクリーンを見れば、軽快なスペインの音楽を背景に二人の女性、ヴィッキーとクリスティーナが情熱の国スペインのバルセロナに降り立ちます。そうして、ようやくこの映画に入り込むことができる。そんな作品が、久しぶりに見たウディ・アレンの映画「それでも恋するバルセロナ」です。

すでに74歳を迎えようとしているかつてのインテリ映画監督の才能はいまだ衰えず、見事な映画のリズム、カメラのリズムにすっかり酔ってしまいました。お見事。

学生時代にはウディ・アレンの映画にひたすら理屈をぶつけて、知識ぶったりしながら楽しんだものですが、一通り人生を経験し、今もう一度からの映画を見ると、その類まれなリズム感には頭が下がります。
ウディ・アレンお得意の、せりふの影に見え隠れする絶妙のナレーション、そして、作品のリズムさえも創出せんとする見事な音楽センス。あるときはノーカットでカメラをパンしながら登場人物の会話を追うかと思えば、クローズアップによって、心の変化、大胆に移り変わる女心や、情熱的な男の欲望をスクリーンにぶつけてくる。

美しいバルセロナの芸術的な町並みを見事に四角いスクリーンに配置し、常に非凡な構図と、カメラ演出で、決してあきさせないバランスとテンポを作り出す。今なお、知的な演出をこなすことができて、それでいて観客を引き込む物語を作り出せる監督としてはアメリカではもう彼しか残っていないのかもしれませんね。

さて、俳優陣ですが、これまた見事。主演のクリスティーナ演じるスカーレット・ヨハンソン。自由奔放に情熱的な芸術家フアン(ハビエル・バルデム)とのSEXに身を負かすものの、どこか現実に引きもどされていくラストの姿の演技は見事。さらに、突然、情熱的に機関銃のようにスペイン語を連発するかと思えば、飛び切りのモデルのごとき振る舞いをみせ、さらに芸術家としての顔をも垣間見せるマリアを演じるペネロペ・クルス。彼女はこの作品でアカデミー賞助演女優賞をとりました。さらにフェロモン撒き散らしのハビエル・バルデムの男臭さ、ヴィッキー演じるレベッカ・ホール。どの人も引けを取らない見事な演技のぶつかり合いが情熱のスペインの暑さをさらに盛り上げ、形式にとらわれない奔放な物語の面白さを倍増させてくれました。

久しぶりの傑作に出会い、本当に満足な一日でした。