まるで日記を読んでいるような、そんな日常の世界を垣間見る面白さ、ただ舞台が日本を1000キロも離れた南極の局地、しかも一般に知られているペンギンやアザラシのすむ昭和基地よりはるか奥地のウィルスさえもすまない極寒の地が物語の舞台というのが違う。
順番に登場人物を紹介した後はひたすらに繰り広げられる南極のドームふじでの生活がつづられていく。
たわいのない毎日の中に、極寒という背景ゆえに巻き起こるたわいのないユーモアがなんともほほえましく、日本と極端に遠い世界でのもの悲しい出来事さえも笑い飛ばしてしまうほのぼのしたドラマに仕上がっています。
最初、いまひとつリズムに乗りづらかったのですが、なんのなんの、そのリズムに乗りづらいのがこの作品の舞台での生活のリズムなのです。そしてそのリズムにいつの間にか入り込んで、登場人物たちと一緒に生活を始めているかのように引き込まれてしまうと後はもうラストシーンのなんともいえない暖かいラストシーンまで、スクリーンの中の登場人物たちのほほえましい毎日から目を話せません。
主演の堺雅人さんの独特の個性は今回の作品ではかなり抑えられていますが、回りの演技人の個性からすると、いわゆる目立たなかっただけかもしれませんね。
まるで隣の家のお話を見ているかのように淡々と進むストーリーが、どこか、人間同士のなんともあたたかい、ぬくもりを感じてしまうのです。
監督の沖田修一さんはこの作品が商業映画第一作目だそうですが、いわゆる癒してもらえるようなアットホームな世界、そして、まだまだ捨てたものではないかもしれない日常への実感をしっかりと植えつけた丁寧な演出に拍手したくなる思いでした。
なんか、好きですねこの映画。堺雅人さんのラストの笑顔が忘れられません