くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ウルヴァリン:X−MEN ZERO」

ウルヴァリン:X−MEN ZERO

本家「X−MEN]シリーズのスピンオフ映画である。X−MENシリーズのほとんど主役であるローガン(ウルヴァリン)を主演に、ウルヴァリン誕生までのお話が描かれる。
とはいっても、アクション娯楽大作である。派手なバトルシーン、巧妙なCGシーン、豪快な展開は見所満載。エンターテインメントとしては十分な完成品といえますが、「バットマン」シリーズの誕生物語のとはその作品の質は雲泥の違いといわざるを得ません。

冒頭、ローガンの幼い頃のシーンに始まって、兄ビクターと家を逃げ出すところから導入部へとつながります。このあとつづくクレジットシーンは、二人が数々の場面で常に二人一緒に戦ってきた模様が描かれ、驚異的な治癒能力の二人が類まれな寿命で現代まで来たことを暗示させています。このあたりの演出はさすがにギャビン・フッド監督、かなり力が入っていますね。

ところが、このあと、息切れしたのか、全体のイメージが完成していなかったのか、脚本の流れをただ追って、CGシーンで見せ場を作っていくというやや手抜き(言い過ぎかも)の演出になってくるのがなんとも残念。クレジットシーンであれだけ凝った演出ができるのであれば、本編になったあとももうちょっとオリジナリティあふれる映像を作り出してほしかったですね。もし、X−MENシリーズのスピンオフでなかったら、観客はついてこないかもしれません。

こうして本編が進めば、ローガンが超合金の体となって、殺人鬼と化し、愛する人たちを殺戮した兄ビクターを追い詰める場面へとつづきます。速いテンポのストーリー展開と、こだわらない演出が、気楽に見る分には最高の妙薬となって、次々現れるさまざまなミュータントたちとの戦いぶりを楽しめます。見せ場見せ場は迫力満点で、ただ、ミュータント同士ゆえのCG撮影に頼った部分もあるのは気になるものの、ゲーム感覚で見れば本当に面白い。

二本の刀を自在に操るウェイド・ウィルソンのアクションが特に面白くて、こんなスピード感、なんで日本の映画で作れないのかと思ってしまいます。このウェイドとローガンの戦いが、単調になりすぎる切り裂きシーンの連続にスパイスになって、中盤から後半を引っ張ります。
ストーリーが盛り上がる中盤から後半を中心に緩急のない展開が続くのはちょっと思い起こすと鼻につくような気もしますが、一気にラストシーンまで持っていく迫力はこれぞ娯楽映画です。

ラストシーンは本来のX−MENへ続くように接着剤のごとく、とってつけたシーンが挿入され、作品は終了します。
まぁ、楽しめる作品ではありました。スピンオフですからこの程度でいいのではないでしょうかね。
ただ、「バットマン」の新シリーズのような映像作品としての完成度はあまりなかったように思います