たかが映画じゃないですか?気楽に楽しみましょうよ。「面白いですよこの映画!」っていう映画に出会いました。もちろん原作のコミックは大ベストセラー。多分原作のファンの方は「どこが気に入らない、あそこがつまらない」などおっしゃる方はいらっしゃるでしょう。でも私は面白かった。次はどうなるのだろう、どんな展開になるのだろうって正直、どきどきわくわくで2時間あまり楽しみました。それでいいじゃないの映画って娯楽ですよ。
さて、オープニングはこれは完全に「デスノート」と同じカメラワークです。この辺にまったく工夫がないのはこの福本伸行監督、がっかりしたのは事実。大きく俯瞰で都会のビル群を捉え、デジタル的に数ショットで舞台となる場面に迫るカットつなぎは金子修介監督が「デスノート」のオープニングとほとんど同じというのはいけませんね
されに100円玉での転がるシーンでつづく奈落の底の地下帝国のシーンはかなりわざとらしいですが、これはこれで原作を知らない人への紹介としてはいいんじゃないかな。
全体に特に凝ったシーンはありませんが、徹底的にクローズアップを多用し、まるで登場人物の心の中を覗こうと凝視していくようなアングルが見ている私たちにもこの作品の心理戦に引き込もうとする効果があって、緊張感が伝わってきます。
藤原竜也演じるカイジは、かなりオーバー気味の演技ですが、この作品の主人公の設定にそぐわないすっきりしすぎている彼の容姿の欠点をカバーしようとする演技者藤原竜也の努力がひしひし伝わってきます。
最初の限定ジャンケンで登場する山本太郎扮する大阪弁のキャラクターの魅力も、その演技力の熱意に非常に魅力的に見えて、藤原竜也との対比が本当に面白いし、その展開に引き込まれてしまう。さらに中盤の鉄骨渡りの場面ではそれぞれのゲーム参加者の心理物語に主眼が置かれ、このゲームの背景にある富裕層たちへの痛烈な風刺も挿入されて、緊迫感と、ドラマ性にそれなりにのめりこみます。
そしてクライマックスのEカード戦、名優香川照之と藤原竜也の演技合戦のごとく展開する脚本の組み立ての面白さはこの作品の醍醐味といってもいいんじゃないでしょうか?クローズアップの効果が最大限に発揮され、原作にはもっとそれぞれのゲーム戦のトリックの面白さ、その暴露戦の面白さもあるのでしょうが、そこを心理戦の面白さを徹底的に追求した大森美香の脚本は秀逸です。
他の登場人物ですが、やはり天海祐希はテレビ俳優ですね。演技がテレビ的でそこから抜け出せません。どうもスクリーンには荷が重過ぎる。それと佐藤慶、さすがにお年でしょうか、かつてのカリスマ性のある存在感が出てきません。でもこのお二方、このドラマには欠かせないキャラクターをしっかり演じておられたと思います
原作の味を大切にしつつ、映画としてのオリジナル作品として完成したこの映画、映像表現の秀逸さは特に見られないとはいえ、娯楽映画としての面白さは満喫できると思いますよ。映画って気楽に楽しければいいんですよ。おもしろかったです