「ATOM」
上戸彩ちゃんがアトムの声をしているというその理由だけで見に行ったアメリカ版「ATOM」。
本来、CGアニメが大嫌いにもかかわらず、声だけを聞きにいくというのもなかなか自分でもようやると言う感じです。
しかしながら、このアニメ、結構面白かった。
ストーリーの展開が非常にスピーディーで、子供向けの展開に近いのは仕方ないにしても、大人が十分に楽しめる映像に仕上がっているのです。
もちろん、日本のアニメほどの絵としての完成度の高さはありません。そこはアメリカ的といえばそうなのですが、それでも最後までだれることがないのは、やはりこういうヒーローものを作らせるとアメリカはうまいね。
前半の誕生の物語から中盤の人間との交流、後半からラストのバトルシーンときれいに構成を考えているし、それぞれの登場人物をステロタイプ化しわかりやすい勧善懲悪の展開を作っている脚本はなかなかのものです。
上戸彩ちゃんの声が聞ければいいやという感覚で見に行った割には結構楽しんで、ラストではちょっと感動してしまったりして、楽しいひと時を過ごせました。
エンディングタイトルに懐かしい「アトムのテーマ」が流れるとなぜか懐かしいノスタルジーまで感じてしまって、胸が熱くなってしまいました。見て損はなかったなぁという感じです。
それにしても、上戸彩ちゃん、アトムとかぶさった見事な声優振りでした。拍手
「エスター」
久しぶりに、しっかりと作られたホラー映画に出会いました。
どうも最近のホラー映画はスプラッターか、ショッカーばかりだったので、まぁまぁ満足しました
監督のハウメ・コジェ=セラ監督は音を非常に効果的に使っています。音にこだわったというのは娘のマックス(アリアーナ・エンジニア)を聾唖者として設定したところにもこだわりが伺えます。
マックスと話す場面は完全にサイレントの映像にし、その前後のショッキングシーンを引き立てる役割と不気味さを増幅させる効果があります。
冒頭から母ケイトが娘を産むために病院をおとづれるところから始まるのですが、夫が受付をしているところから、車椅子に乗せられたケイトが主ずつ質へ向かう途中で血を流しやがて手術室でのショッキングなシーンへと続きます。このあたり正当なショックシーンとして一気に引き込んでくれますね。
その後、ロシアからアメリカにつれてこられた孤児であるエスターを引き取るところ殻物語は本編へ。
その背後に三人目の娘を流産したことへのショックや、かつてアルコール中毒になったケイト、浮気をしたことのある夫ジョンなど、この家族の背景が挿入されていきます。
エスターを引き取ってから、不気味な事件が続き、エスターの正体を巧みな複線でさまざまなシーンで暗示し展開していくストーリーは本当にぞくぞくするほどに怖いです。
常套手段の設定と、シーンが続くのですが、ラストの驚愕の真実へと続くまでのじわじわと迫るショックシーンの連続はかなりの充実感で迫ってきます。
非常によくできたホラー映画ですが、映像の個性はヒッチコックやカーペンター、サム・ライミなどに比べるとかなり平凡です。しかし、低い位置からのアングルや音の効果、さりげなく語らせるスラングによる共謀性など、無駄のない展開はなかなかのもの。
ラストのエンディングは今までのホラー映画にない設定で、思わずうなってしまいました。
久しぶりの正統派ホラー映画に出会ったという感想ですね
「クヒオ大佐」
実在の結婚詐欺師クヒオ大佐を主人公にした創作物語。堺雅人さんの独壇場という感じの楽しい映画でした。
とはいえ、何でこんな人間に女性はだまされたのだろうと思ってしまいます。
冒頭、「血と砂と金」という仰々しいテロップから、官僚たちがアメリカと湾岸戦争の資金拠出の件で交渉しているシーンが続きます。
そして突然「第二部クヒオ大佐」とテロップが出て本編へ。
なんともふざけた導入部ながら、何かしらの不思議な面白さの予感がします。
さて、本編に入れば、松雪康子扮するしのぶとクヒオ大佐(堺雅人)のやり取りの話を中心に、次第に次のターゲット銀座のママ未知子(中村優子)、さらに自然博物館の春(満島ひかり)との絡みが挿入されながら、ひたすら堺雅人の独壇場のごとき一人舞台のような展開が続きます。
そのコミカルな道化師のような詐欺師振りが、なんとも不思議で、これが実在の人物をモチーフにしていなかったら、とうにばかばかしくて、見てられない人物ですね。
そんな展開の中、やがてしのぶの弟が登場するあたりから、正体がばれるシーンそして、未知子に見破られるシーンなどが挿入され、物語は俄然更なるコミカルな展開になっていきます。
とはいえ、どうもストーリー展開にバイタリティがないというか迫力がないというかリズム感が乏しいというか、今ひとつ笑いが出るわけdもないし、間がうまいわけでもない。堺雅人の演技力のみに頼った作品に終始するのです。
せっかくの題材が生かしきれていないようで、ラスト近く、心中を迫られても命に固執する小心ぶりや、子供時代の悲惨な思い出ゆえに今になってしまった生い立ちの切なさやらがどうも迫ってきません。
その上、エンディングの夢幻のごとくの逮捕シーンと妄想は、どうもいただけない。どこかちぐはぐといわざるを得ないもったいないできばえでした。
でも、堺雅人の一人芝居を十分に堪能できる作品としては楽しめましたよ。しかも実在した人物なんて、ほんと、大笑いです。