くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「笑う警官」

笑う警官

とにかく、プロの一流の俳優さんを使って、プロのスタッフを使って作った素人映画という印象でした。
せめて脚本に一流の人を起用すべきだったと思います。脚本も監督も角川春樹が担当したのは作品として完成度を上げるのには無理があったでしょう。

ただ、私も映画を作っていた経験から、面白い原作を知ったらそれを映画にしてみたい、それなら自分で脚本を書いて、自分で演出をしたい。これが映画少年なのです。そして実際角川春樹さんは映画をよく知っている。今回の作品を見ていても、どこかで見たような、こんな場面あんな場面がちりばめられています。だからこの映画をまったくけなしたくないんです。

とはいえ、客観的にこの作品を見てみれば、正直、映画としてのリズムがぜんぜんなってないというべきでしょうね。
原作も読んでいますが、原作は非常にテンポがうまい。謎解きの面白さと、社会ドラマとしての奥深さ、そしてクライマックスのアクション性まで、実に計算されつくされています。
ただ、映像という別物にした段階で、脚本家、監督などの改編、解釈があって当然であると思うし、この映画はそのように作りかえられています。しかしそこに、あれこれ詰め込みすぎたきらいがある。だから、クライマックスのあとも延々と自分の自我を演出していく。

冒頭のタイトルバックはタイプライターに打つ「笑う警官」の映画読みスペル。そしてサックスを吹く主人公が映る。このあたりからすでにこの映画で監督の目指したいものは「L・A・コンフィデンシャル」のようなスマートな警察もの、そしてフィルムノワール的な芸術映画色を目指したのでしょう。そこに原作にあるミステリー性を詰め込んでいく。このあたり何とかこなしているものの、二転三転が非常にくどい。ポイント、抑揚が今ひとつまとまっていない。

全編に無国籍推理ドラマの様相を呈しながら物語りはきわめてローカルな北海道警察の物語なのです。

そして、二転三転の後、この物語のクライマックスがきますが、原作ではこの部分だけで半分くらいの時間を要するほど緻密かつ練りこまれたシーン描写になっています。この最大の見せ場を極めてあっさりと流したあたりにも、角川監督がこの映画をスタイリッシュにまとめたいという気持ちがまざまざ見えるのです。そして最大の見せ場のあとに続く、更なるシュールなどんでん返し。くどい。

芸達者の俳優さんを使いながら、俳優さんへの演技演出がまったくなされていず、生きていない。つまりここにも自分は素人監督だという気持ちがどこかにあったのではないでしょうか。だから演技はプロにお任せになってしまった。

そしてエンディングのあとにつづくエピローグ。これでもかとひっくり返そうとしながら、さらにエンドタイトルではこれまたどっかで見たようなヨーロッパ映画の名作を思わせる画面が続く。

何度もいいますが、原作とは若干違う物語ではあるもののそれはそれでいいとして、映画少年が作った素人映画としては楽しめました。だから、それでいいんじゃないでしょうか。私は好きですね