掘り出し物でした。当初、見に行く予定ではなかったのですが、昨日会った映画友達に薦められて急きょ見にいたのです。
映画が始まると、いきなり夕陽へ走るランナーのシーン、そしてとある食堂で学生らしき二人ハイジ(小出恵介)とカケル(林遺都)が食事をしている。何かわけもわからず小出恵介におごられながら、やがて二人は外へ、そして走る。実は食い逃げなのだ。この導入部というか、つかみが本当に見事。名作「スティング」を思わせるすばらしいファーストシーンである。
さらにその後続く竹青荘へとシーンは移り、巧みというほかない人物紹介が手際よくそしてユーモアを交えて行われる。ここまででほとんどの主要人物の紹介と性格描写が完成する。まさに脚本家大森寿美男の実力発揮である。
今回が初監督であるが、かねてから森田芳光監督作品などの脚本を書いてきた人だけになかなかのものである。
その後本編へ物語りは続くが、なんとも無駄がない。淡々と進むようで、どんどんストーリーが展開していく。その中で10人の主要な登場人物が生き生きしているからすごい。主要人物の小出恵介と林遺都がほんのわずか頭を持ち上げているだけで、どの人物にも公平に力が注がれているから、それぞれの登場人物のそれぞれの目標とすることそしてそれぞれの人物を通して描かんとしていることがきっちりと見えてくるのだ。
そして当然、クライマックスは箱根駅伝のシーンであるが、そこに登場するライバルたちも悪すぎず立派過ぎず、微妙な存在感でまわりを盛り上げるところがまたすごい。
レースシーンはリモコンカメラや超望遠レンズをたくみに組み合わせ、躍動感あふれるレースシーンを演出する。そしてそこに見え隠れする青春のドラマ。
てんこ盛りの物語りながら、それぞれが秘蔵に丁寧に描きこまれていて、最後の最後でなんとも熱い感動があふれてくるのである。
いい映画に出会いました。