くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「2012」

2012

「デイ・アフター・トウモロー」を見たときに、少しは人間ドラマも描けるようになったかと見直していたローランド・エメリッヒ監督であるが、今回の作品はまったくダメ。いったいなんでこの程度の監督に莫大な映画予算が出るのか不思議でならない。確かに特撮の規模はでかいが、迫力はない。ただのCGソフトの技術のすごさだけなのである。

主人公と思われるジョン・キューザックもぜんぜん人間として生きていないし、政府高官たちの葛藤もまったくこちらに伝わってこない。

冒頭からいきなりわけもわからないままに世界の終末がアメリカ大統領以下の高官たちに知らされる。何の疑いもなくいつの間にか綿密な裏づけがなされているようで、即座に人類救出作戦が実行に移される。もちろん、従来のローランド・エメリッヒ作品同様主導権があるのはアメリカである。
後は世界中、というかアメリカ国内のデザスター状況がどはでな特撮シーンの連続で次々と描かれていく。観客はひたすらそのCGシーンを眺めるだけである。

主人公たちの脱出劇ははらはらどきどきなのかもしれないが、これが又ぜんぜん手に汗握らない。おそらく脱出できるのであるから、当然かもしれない。これは見せ場を挿入する位置が早すぎるのだ。しかも同じ程度の見せ場が何度か出るために帰って盛り上がらないのである。人間が描けていないとよけいにこうなる。
そして、ようやく脱出して、ではその後、政府が考えていた救出作戦の謎へと迫ろうとするのだが、このあたり「未知との遭遇」のごときである。しかしそこにはあっさりとたどりついて、ノアの箱舟が中国に建設されていることがすんなりとわかるあたり、まったく脚本に工夫がない。

さてさて、今までのローランド・エメリッヒ監督作品を見るに、なぜ、ここまで高予算の映画がこのB級監督に任せるのかわかったような気がします。
つまりどの作品もアメリカが正義の味方で世界を救うという構図があるのだ。「インデペンデンスデイ」「GOZIRA」などそして、今回の作品もそうである。アメリカはまだ世界のリーダーだと言わしめる映画ばかりなのだ。
しかも今回は、ノアの箱舟は中国の人々を中心に中国で作らせている。そして乗るのは世界の高官たち(もちろん中国の人もいるのでしょうが)。これはいただけない。これは明らかにアメリカのプロパガンダ映画である。

そう思い始めると、余計にローランド・エメリッヒ監督が嫌いになってくる。

確かに特撮を楽しむならそれでいいのかもしれない。素直に楽しみたいが、さすがに今回の作品はあまりにも露骨過ぎた。