くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「バグダッド・カフェ(ニューディレクターズカット)」

バグダッドカフェ

こんなに良い映画見逃していたなんて本当にくやしい。
とにかくすごくいい映画でした。胸がじわっと感動する素晴らしい映画でした。

とにかく冒頭から度肝を抜かれます。太った女性(主人公ジャスミン)とその夫がなにやら道端で口論している。カメラは極端な斜めの構図で車越しやらでその様子を捉えます。しかも細かいカットがびっくりするほどの極端なジャンプカットでつなぎ合わされ、車の中のシーンかと思えば外に立っていたり、又別のカットになったりと、ハイテンポで繰り返されるのでこの夫婦の口論の様子がこちらまで伝わってくる。そして、喧嘩の末に妻は荷物をつかんでさっさと出てしまう。後を追う風でもなく夫は車へ。

さっさとハイウェイを歩くジャスミンの姿、時折通るトレーラーと、吹きすさぶ砂埃が殺伐とした様子を表現しています。
独りになった夫は車の外に黄色の魔法瓶を残してどこやらへ走り去る。場面が変わるとジャスミンの横へ一台のトラック、「良かったら乗りますか?」という男の言葉にジャスミンは警戒心からか気丈な性格からか断る。走り去る車の荷台には黄色の魔法瓶。それをみつめるジャスミン

画面は黄色のフィルターをかけ、意図的なサイケデリックな景色が映されます。

画面は変わってハイウェイ沿いの一見のカフェ兼モーテル。この映画の舞台バグダッド・カフェ
仕事が忙しくて狂ったように罵声を飛ばす店の女主人ブレンダ、そんな罵声の中で、頼りない夫(実はさっきのトラックの男)に三行半を下し、夫は出て行く。しかしその様子を涙を流して見送るブレンダ。

そこへ、カートを引いてジャスミンがやってくる。物語の本編がここから始まる。ジャスミンはこの黒人のブレンダの姿を見て一瞬、自分がこの黒人たちにかまゆでにされるシーンを思い浮かべるあたりが又、ブラックが効いていて、ニンマリします。
やがて、殺伐としたカフェの住民たちがジャスミンの登場で次第に心が緩み始めていく様が見事に描かれていく。しかも、一見何のとりえのない人たちが実に温かみのある人間に変わって行く様が本当に胸を打ちます。カメラは終始大胆な斜めの構図を取り入れ、さらに画面に配置する物の位置も絶妙に美しい。そして赤、黄色、青のサイケデリックな品物や服で独特の色合いを出すが、それがかえって殺伐としたカフェの現状を誇張するようである。イエローフィルターをレンズに懸けた意図的な画面作りも非情に効果的で、時折入れるハイウェイを走り抜けるトレーラーの様子、透き通るように見せる青空、虹などが非常に美しい。

もちろん、この作品のテーマ曲「コーリングユー」が随所に挿入されてストーリーを引っ張っていくし、時折挟み込むコミカルなアップテンポの曲なども作品のリズムを絶妙に盛り上げる。
ジャスミンの手品でカフェはどんどん盛り上がり、トラック野郎たちまでここへ立ち寄るのが楽しみになって店は繁盛していく。しかし、ただの旅行客であるジャスミンはやがて去らざるを得なくなり。再び、殺伐としたカフェ。しかし、いくばくかの時間の後、ジャスミンはかえってきて・・・

まだまだ細かいシーンを取り上げたら書ききれないほどに、随所に見所満載で、しかもヒューマンドラマとして、そしてある意味ラブストーリーとしても最高の作品なのです。何回も見たくなる。こんな良い映画、今まで見逃していた自分が悔しいです