くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ジャック・メスリーヌPart1ノワール編 Part2ルー

ジャック・メスリーヌPart1

今公開中の「パブリック・エネミーズ」にあやかってか、宣伝文句に「フランスのパブリック・エネミーズと呼ばれた男」という触れ込みで公開された作品で、なんとPart1、Part2の二部構成、それぞれ独立した作品として二本で公開された映画を見る。

「Part1ノワール編」は、スプリット画面を多用し、冒頭のタイトルバックからして、ちょっと小粋なシーン作りを心がけて物語が始まります。
いきなり主人公ジャック・メスリーヌが交差点で銃撃殺害される末路のシーンを描き、回想形式で進んでいくのですが、随所に画面分割のシーンを取り入れ、銀行強盗、誘拐、殺戮などまさにあらん限りの犯罪を繰り返す主人公の姿が映し出されます。

1950年代後半から1970年代後半の物語なので、果たし故、こんな時期にフランスではここまで犯罪が横行していたのかと目を疑いますが、まぁ、ある程度のフィクションは交えられているのでしょう。それにしても、演出手法に特に個性を見せ付けるものはないものの、最初に書いたスプリットスクリーンによる淡々として物語は、飽きさせない魅力がないこともないですね。見せ場見せ場を次々と描いていくので、あまり知らない主人公ながら、あまり退屈せずに見ることができました。しかし、先日見たデリンジャーの生涯とはちょっと違って、男のロマンが見え隠れしないのはやはり時代背景に違いでしょうかね。


さて、休憩を挟んで「Part2ルージュ編」は演出手法もちょっと変わって、斜めのカメラの構図がたくさん出てくるようになります。前半の銃殺シーンの少し時間の経ったところから始まり、物語の本編は再び回想されて、前半のラストで何度目かの刑務所に入り出てきたところから始まります。
Part1で見せた派手なシーンよりも、ちょっと暗いイメージで自分のポリシーに向おうとする主人公の姿が描かれ、手持ちカメラなども冒頭に多用したためにかなりしんどいストーリー展開です。

あまりなじみのないアルジェリア戦争ケベック開放戦線、などの言葉が頻繁に登場し、中途半端な政治色が見え隠れしてきて、作品の一貫性が崩れていくのはちょっと、残念な気もします。もちろん前半の冒頭のシーンでアルジェリア戦線にいた頃の主人公の姿をはさんでいるので、一概に一貫性はないともいえないのですが。
とはいえ、アメリカ映画の「パブリック・エネミーズ」とは作品としてはまったく別のテーマでつづられているのですから、これはこれでよかったのかもしれません。

Part1、Part2あわせて4時間あまりの大作ですが、そう考えると、見るに耐えられる映画だったといえば、そうかもしれない。