くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「わが町」

わが愛

本当に、いい映画を観ました。
織田作之助原作の大阪の物語。監督は名匠川島雄三
奥行きのある見事な構図で非常に画面が美しい。古い映画も最近のようにたくさん見ると、いい作品と平凡な作品の区別がよくわかります。

軽妙でテンポの良いストーリー展開と、小気味よい台詞の応酬による心温まる人情ドラマは、まさに秀逸という言葉がぴったりの名作に与えられる賛辞ではないでしょうか?
特に主演の辰巳柳太郎の台詞の間合いがなんとも絶妙で、職人芸というより、天才的、まさに名優と呼ばせるのに十分な演技力にまいりました。

次々と繰り出されるまるで掛け合い漫才のような台詞の数々、思わず笑ってしまうのですが、その後どこかしんみりと、そしてこの主人公の粗野でありながらひたむきに娘、孫を思う気持ちがひしひしと伝わってきて、胸が熱くなるのです。
さらに明治から昭和戦後までの舞台になる大阪の下町の町並みのなんとも人をやさしくしてしまうような景色、主人公たちを囲む名優たちの見事な本物の大阪弁、そして暖かい言葉の数々は、懐かしいノスタルジーも交えて、気持ちをゆったりとさせてくれます。

もちろん、作品の完成度が高いためにこうした心優しい気持ちにさせられるのでしょうが、演出のみならず俳優たちのひたむきな演技、ただ生きることに一生懸命でありながらも、ちゃんと人間としての心のつながりを大切にしていた頃の人々の気持ちも地割と伝わり、本当に映画館を出た後ほっとしたように思いました。

いい映画に出会えてよかった。