くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「好色一代男」

好色一代男

本日見たのは増村保造監督作品「好色一代男
軽快なせりふの応酬とテンポのよい場面転換、ストーリー展開が心地よいコミカルな世界へいざなってくれます。
原作はご存知井原西鶴、京都の老舗の商家の若旦那世之介(市川雷蔵)がただひたすら女遊びに明け暮れる様子が描かれていきます。

とにかく一途に女性を愛するひたむきな純粋さが心地よく、そんなあまりにもピュアな主人公の生き様を市川雷蔵が見事に演じていくあたり、とても眠狂四郎シリーズのような研ぎ澄まされたニヒルなイメージとはうって変わった演技力の深さに頭が下がります。

中村鴈治郎ふんする商家の主人が自分の店に入ってくるところから物語が始まります。
入った玄関上がり口で一粒の米を見つけ、奉公人に倹約の大切さを説く導入部はなかなかシリアス、と思いきやこの主人が無類のけちん坊でそれにかぶさって主人公が画面に登場するくだりは見事。このあたりの漫才のようなせりふのやり取りがとにかく楽しい。

やがて、女遊びがすぎて、江戸の支店へ奉公に出されるものの、そこでもまた女遊びをしたのでとうとう家を勘当され、日本中を回りながら行く先々で女性を大切にしようとひたむきに生きる主人公の生き様がなんとも小気味よいです。
助けては逃げ、助けては逃げを繰り返しながら再び京都に戻ると、父は危篤、そしてそのまま他界し、家の身代をつぎ込んで京都の芸子と遊びほうけた挙句、最後には日本を飛び出すという、原作どおりの展開です。

前半、場所を地図で追いながら次々展開する日本各地でのエピソードの面白さが後半に入ってやや手短な荒い描き方になるのは気になりますが、それでも映画全体の軽快そのものの展開の面白さはさすがに、監督増村保造のそして脚本白坂依志夫の力量を感じさせられます。

終盤近くの京都での女遊びの席で、所狭しと半裸に近い女性たちが画面に繰り広げられるあたり、まさに映画黄金期の華麗な世界を見せられるようで、思わずため息をついてしまいました。今となっては、こうした豪華なシーンは二度と実現しないでしょうね。裸をもろに出せばいいのではないということがこのシーンを見るだけでも納得してしまいます。

本当に楽しい映画でした