くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「マイマイ新子と千年の魔法」

マイマイ新子と千年の魔法

昨年公開され、上映が終わったあと、ファンの間から続映を望む声の署名が続けられたアニメの秀作。シネヌーヴォーで再映となったので見に行きました。
まず、音楽が抜群にいい。女性のハミングのような軽快な曲を背景に昭和30年代の山口県のとある田舎町の田園風景、そしてそこを走り回る主人公新子が登場します。

空は青く、一面に広がる麦畑、そしてそこに直角に流れる水路の流れ、どこか懐かしくて、そしてどこかいにしえの歴史を感じさせるこの村を舞台に小学生たちの素朴な遊びの世界、そして空想の世界がつづられていく様は本当に懐かしさと郷愁を感じさせてくれます。

かつて、自分たちが過ごした子供時代の昭和30年ごろ、子供がいると自然に集まってきて、自然に何でも遊びになった懐かしい時代が、屈託のない主人公たちの笑い声のなかで展開していきます。背後に流れる心地よい音楽が物語をどことなく素朴なリズム感に包んでくれる。そして、その音楽のリズムがストーリー展開にさわやかなリズムを生み出してくれる。

名作「時をかける少女」などのマッドハウスが協力したこの作品、宮崎駿のもとで修行したという片渕須直という監督によって実に素朴な作品になって懐かしい時代がスクリーンいっぱいに繰り広げられるのです。そこにはジブリアニメにない個性がさりげなくちりばめられ、本当に特に奇抜な場面などないのに、どこかオリジナリティと個性が垣間見える世界。自分たちもこうだった、あの幼なじみたちはどうしているのかなと思わず胸の中に忘れていた純粋だった時代を思い起こさせてくれました。

ひとりの転校生がやってきて、主人公新子とその友達との交流、さりげなく見える大人の世界、そして、ふと気がつくと大人になりつつある自分にも気がつく主人公たち。それでも今を一生懸命に楽しんで、明日にはもっといいことがあると信じて疑わなかった時代、そして子供時代が、見事にアニメーションという形をとって再現されました。

何度も何度もみてみたい、そしてなんども想い出してみたい。そんな作品に出会えた気がします