くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「スティング」

スティング

午前10時の映画祭またまた行って来ました。学生時代にみたきりの「スティング」。とにかくおもしろかったという印象が強い作品で冒頭の’だまし’のシーンからあっけにとられてみていた思い出があります。

さて30年以上たって見直した感想は?やっぱり見事です。話もわかっているし、だます手口、ストーリー展開、どんでん返しまでほとんど覚えているのに、次はどうなるの?とわくわくどきどき、気がつくと2時間以上の作品を一気に楽しんで、ラストは背筋が寒くなるほど感動してしまいました。これこそ名作ですね。

さて、初めてみたガキの頃とちがって、それなりに映画の知識も身に付いた上でしっかり見直してみると、画面が本当に美しい。どこか茶色のセピア調で統一されたレトロな画面づくりが見事。しかもジョージ・ロイ・ヒル監督のカメラの構図が何ともこっていて美しい。縦にずーっと向こうまで延びる道路を正面からとらえたり、薄汚れた電車の軌道を見上げて俯瞰でとったりと、至る所にまるで当時の記録写真を思い出させるようなアングルがでてくる。

スタッフをみるとなんとカメラマンは名匠ロバート・サーティース。あの名作「ベン・ハー」「卒業」「ラストショー」などの名キャメラマンである。画面が美しくて当然といえば当然。

とにかくこの映画、詐欺の手口のおもしろさだけでなく主人公のフッカー(ロバート・レッドフォード)がやたら走る。そのハイテンポな映像が、対するゴンドルフ(ポール・ニューマン)がほとんど動かないのと対照的でちょこまかと物語にスピード感をもたらすのである。それに、物語の構成が何とも見事。出だしのつかみのシーンから、一気に主人公の恩人ルーサーがロネガン(ロバート・ショー)の手先に殺され、復讐劇で幕を開ける。そして、詐欺の手口の準備が進む一方で、随所に隠れただましのシーンが展開し始める。いつの間にか、みている私たちもゴンドルフたちのだましの渦中に放り込まれているのである。

本命のだましの物語の枝葉の中で銃の撃ち合いがあり、フッカーがプロの殺し屋にねらわれる下りがありと、単純に詐欺の鮮やかさだけで物語を引っ張っていかない。
実は殺し屋が女だったことをすっかり忘れていたのですが・・・。

そして物語はクライマックスへと進んでいく。全く無駄のない伏線と小気味良いテンポ、そしてあの名曲「エンターテナー」が背後でコミカルに奏でられる。これぞ娯楽映画、しかしこれぞ本物の完成品である。

そしてスタッフをもう一度見直すと、製作はなんとディヴィッド・ブラウンとリチャード・D・ザナックである。おもしろいはずだ。
それともう一点、この作品の背景は1936年。なんと日本では今にも第二次大戦でアメリカと戦争しようとしていた時期、対するアメリカはのほほんとそんなことなどどこ吹く風と生活していたのかと思うと、思わずにんまりしてしまった。負けるはずですね。

さすがにここまで完成度が高いとDVDではそのおもしろさは満喫できませんね。最高でした。