くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「動くな、死ね、甦れ!」「ひとりで生きる」

動くな、死ね、甦れ!

田中さんが絶賛していたヴィターリー・カネフスキー監督作品を神戸新開地へ見に行ってきました。
まず「動くな、死ね、甦れ!」
最初、なんの前知識もなくみていたので、舞台背景がわからず苦心しましたが、そのうち次第に見えてきました。
舞台は第二次大戦直後のソビエト極東のスーチャンという町。収容所になっているこの町での少年と少女の物語である。

日本人の姿も周辺に見られるし、実際背後に日本の「三池炭坑の歌」や「黒田節」などが流れて不思議な感覚である。モノクロームですが、主人公ワレルカという少年の思春期の心の爆発とでもいうべき躍動感が画面からほとばしり出てくるし、彼に守護天使のように寄り添う少女ガリーヤの存在が何とも甘酸っぱくて切ない。

導入部、炭坑の穴から人々が出てくるシーンにはじまる。そして、すさまじいほどに荒れた生活の中で必死でかけずり回っている主人公たちの姿が生き生きと描かれていく。そして、いつの間にかその力強い画面に引き込まれていくのである。ことあるごとに大人に反抗する少年ワレルカの姿は、スターリンレーニンを賛辞しているにもかかわらず貧困の生活を強いられている現実に対する反抗でもあるのかもしれない。

現実のすさんだ社会の原因が今のソビエトの体制であり、それをわかっていながら賛辞する大人たちへの反抗がワレルカの行動になるのでしょう。そして彼をそっと見守る少女ガリーヤの存在がやるせないテーマに神の光を与えているのかもしれません。

行き場のない執念の気持ちはやがて少女への恋に変わっていき、その感情が頂点にならんとしたところで迎える悲劇のラストシーンは私たちにこの上ない感動をもたらすのです。さらに続く狂った裸の女のエピローグはなかなかシュールで、その場面にすでに主人公ワレルカも存在しないあたり、カネフスキー監督の個性なのかもしれないですね。

次の作品は「ひとりで生きる」
上記作品の続編で、主人公ワレルカはすでに15歳、そして彼に寄り添うのはガリーヤの妹ワーリャ。今回はカラー作品になります。

前作同様、時折背後に日本の歌が挿入されカネフスキー監督らしさがかいま見られます。さらに主人公が成長し思春期まっただ中になったせいか、やたらセックスシーンも登場します。しかし、そんなシーンも妙にあっけらかんとしていてコミカルでさえあります。
ふとした騒ぎから町をでていくことになった主人公ワレルカ、造船の仕事をしながら新しい女性との仲もはぐくまれますが、新しい土地へ移らんとしたところへワーリャと再会。しかし、冷たい態度をとるワレルカに愛想をつかして帰りの船に乗るワーリャ、しかしその後に再び悲劇が待っています。

ラストシーンは非常にシュールでワレルカが死んだのか幻想をみているのかというようなエンディングを登場させ、並々ならぬカネフスキー監督の才能をかいま見せる秀作でした。