くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「おぼろ駕篭」「王将一代」

おぼろ駕篭

田中絹代特集で伊藤大輔監督作品二本をみる。
「おぼろ駕篭」
物語はたわいのないものである。大奥での権力争いの結果、殺人事件が起こり、それを捜査するやたら強いものぐさ坊主を主人公に、周辺の人物を描写しながら展開する娯楽時代劇です。

縦横無尽に繰り広げられるカメラワーク、そして画面に奥行きを持たせ、シーンシーンを大きく見せる構図で引き込んでくれる伊藤大輔監督の演出は見事。
少々荒っぽい演技ながら個性丸出しに存在感を見せる主人公の坊主役の板東妻三郎が心憎いほどにストー^リーを引っ張っていきます。共演の女優も田中絹代山田五十鈴など豪華絢爛、男優も月形竜之介佐田啓二などオールスターである。

と、いろいろ書いてもやはり当時は日本映画黄金期、映画が娯楽の王様だった時代ですから、単純に娯楽映画である。しかし、次々と生み出される娯楽映画の中に飛び抜けた名作が飛び出していた当時のレベルの高さを目の当たりにする秀作でした。


もう一本は「王将一代」
以前見た板東妻三郎版の「王将」の原作を元に伊藤大輔監督が再度リメイクした作品。ストーリーは前作が坂田三吉の妻小春が死ぬところがクライマックスになっていたが、今回は小春は物語の中盤ですでに他界し、その後の物語がストーリーの中心になり、やがて落ちぶれていくあたりまでを描いている。

前半部分はほとんど前作と同様の演出であるが、やはり前作「王将」は名作でしたね。画面から飛び出してくるようなヴァイタリティあふれる映像でしたが、今回は時として肩すかしを食う場面もちらほらあります。もちろん、人生の終盤まで描いていますから、全体に引き延ばされたように平坦化しているのはわかりますが、終盤はちょっとしんどい。

とはいえ、所々に見せる迫真のシーンの醍醐味はやはり伊藤大輔ならではの職人芸でしょうか。前作がなければ坂田三吉の物語としてはこれはこれで秀作でしたが、いかんせん、前作が完成度が高すぎるために影が薄くなります。でも、ラストは胸を打ちます。